東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

ある老夫婦の話

若者からみると不思議な不思議な老夫婦・明治末生まれと大正始め生まれのカップル・のお話です。
先日明治生まれの夫が99才で大往生をとげ亡くなりました。ある日突然トイレで立てなくなり、それから寝込んで約一ヶ月自宅でひっそり息をひきとったそうです。夫は大変健康な人で医者に罹ったことがありませんでした。亡くなった時お骨は99才とは思えない若々しさ、喉仏は稀にみる高貴なお姿だったそうです。晩年は、新聞を読み散歩をし、妻の作った食事をし、という毎日を過ごしていました。
二人はお互いの裸を見たことがない、手をつないだことがない、勿論キスなんてもってのほかと、妻が少々恥かみながら話してくれました。夫は万年青年!腰の低い学者、俗世間を超越して生きて来た方という印象でした。稲の研究者だったそうです。余程の家族の理解がないと出来ないであろうストレスのない生活と思われます。
そんな生き方をしてきた夫ですから家計は火の車、妻が頑張るより仕方なかったのです。妻は病気であろうと気分が悪かろうとやむを得ず夫の要求を満たして生活してきたのでしょう。妻にしてみれば辛い時も多々あったと思います。が、夫に鍛えられたお陰で、重い荷物を持って腰が砕けてしまいほとんど寝たきりの生活を強いられた時でも彼女は、自力でトイレへ行っていました。そんなほとんど寝たきり状態の時妻は、辛さのあまり嫁を非難することもありました。その頃の妻の口癖は「感謝はしてますよ。感謝はしてますけれど・・・」でした。一年経ち、自力であるけるようになって彼女の言葉が変わりました。心からの感謝が伝わってくるようになりました。
この夫婦に5人の子供がいました。長男が、6才の時疎開で親元から離れ、戻って来たときには人が変わっていたのだそうです。彼は元に戻れないぐらい病んで帰ってきたのでした。一生親を赦せなかったのでしょう、死ぬまで親を恨みお父さんお母さんと呼べなかったといいます。大人になって飲んだくれになり50代なかばで死ぬまで夫婦二人で面倒をみたそうです。昨年の8月の長男の13回忌まで生きていなければと寝ながら念じていた妻。それも果たし、夫も見送り、今はなにを想って生きているのでしょう?
また素敵な明治生まれの男性が一人いなくなりました。


鵜原 増満



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