東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

ウィルヒョウの病理学を否定する理論

昨日は、「千島学説との出会い」と題して、腸造血説をご紹介いたしました。今日はその続きとなります。
お付き合いの程よろしくお願いいたします。


昭和56年6月15日にNHKラジオ放送・人生読本という番組で、操体創始者の橋本敬三先生が、「人間の設計」と題してインタビューに答えておられます。
先生のお声を拝聴しているだけで、からだが癒されるほど、穏やかで謙虚な語り口。
多くの患者さんから慕われるそのお人柄が、偲ばれます。

ところが、現代病理学の大家・ウィルヒョウの話をされている時は、少し語気が強くなり以下のように話しておられます。

<現代医学っていうのはね、ボデイの生理学が全然駄目ですよ。考えてないんだから。
僕は初め生理をやったんだけれども、ボデイの生理ってこと習ってないものね。
それの一番元になっていることはね、前世紀の終わりですから僕の生まれた頃、既にできていたんだけれども、病理学というのがあってね、その世界的大家にウィルヒョウ(1821~1902)という人がいたわけですよね。
ウィルヒョウの病理学ってのは解剖・病理の組織学ですよ。組織ですからね、細胞までの病気を見つけているんで、病気というのはそれだと思っているわけね。
だけどもボデイってことを全然考えていない。だから現代医学でもボデイのこと考えていませんよ。
だから整形へ行ったって、やること、引っ張ることしかないでしょ。
第一、分類してないからね。
          (中略)
ただ、誤解してるから、病気ってのは細胞から始まると思ってるからね。そいつは考えが逆立ちしているからね。
ボデイが一番先にある刺激を受けて、ボデイが変形してくると、それをキャッチするのが感覚ですよね。
それが不定愁訴になるわけ。そしてあっちが悪い、こっちが悪いって。
だけどそういうこと習ってないから今の医学はね。
さっき言ったウィルヒョウの話から、内部に変化があるから、そういう気持ちになるんじゃないかと誤解するわけですよね。そうじゃないんだと僕は言うんだ。>
(下線筆者)
 


      ー真理を追究された橋本敬三先生ー

なんという気骨あるお言葉でしょう。
背筋を伸ばしてウィルヒョウと真っ向から対峙しておられます。
そして、揺るぎない自信がひしひしと伝わってきます。
橋本先生は、平易な言葉で、
<内部に変化があるから、そういう気持ちになるんじゃないかと誤解するわけですよね>
と表現されていますが、この意味するところは甚大です。
技術の進歩と共に、細胞内のあらゆることが分かったつもりになっても、肝心要のからだそのものを見ていない。
単なる仮説に振りまわされて、からだそのものを診ていない。からだの声を聞いていないとおっしゃっているのです。
そして、
<病気ってのは細胞から始まると思ってるからね。そいつは考えが逆立ちしているからね>
と、ウィルヒョウの病理学を完全に否定されています。


今年の8月20日、従兄の奥さんの葬儀がありました。
この数年で、友人の奥様が、二人ガンで亡くなられました。本人は元より、連れ合いである友人の苦労たるや、想像を絶するものだったようです。

ガンは不治の病、早期に発見しなければ、ガン細胞が増殖し、手に負えなくなるというイメージと真っ向から戦わなければならず、実際には見ることのできないガン細胞増殖イメージが、ガン告知からトラウマとして立ちはだかるのです。

ところが、このガン細胞増殖のイメージは、150年以上も前の病理学者ウイルヒョウの仮説に過ぎないと、自らのガンを病院治療することなく完治した人がおられます。
北海道在住の稲田芳弘氏。

この方が出版した本が「ガン呪縛」を解く(ECO・クリエイテイブ出版)。
操体の創始者・橋本敬三先生は、ウイルヒョウの病理学説を否定した論文を早くから投稿し続けた為、日本医師会から無視され続けました。
しかし、橋本先生は「大切なのは真理」という信念のもと、真理を訴え続けられたのです。

橋本先生の信念と同じ延長上にあるのが、千島学説だと私は思っています。
この「ガン呪縛」を解くでは、詳しく千島学説の説明をしています。
千島学説は、その発見(仮説ではなく、事実=真理から見いだした学説)から、現在にいたるまで社会に葬り去られ、大きな書店に行っても千島学説に関する本はまず置かれていることはありません。
なぜなら、この学説が認められると現行の医療が完全に否定されるからです。
それほどの「危険思想」と見なされるのです。
ただ、インターネットの発達によりその気になれば、情報は入ってきます。

そこで、現代医療の基礎をつくりあげたウィルヒョウを「ウィルヒョウ・細胞分裂病理学」で検索してみました。

すると、第二番目に読まれている項目に、「医療産業の欲望から生まれたガン分裂説のウソ」
という過激な紹介に出くわしました。
その一部を記載します。

<ウィルヒョウ(一八二一〜一九〇二)は、ドイツの病理学者。さらに人類学者から政治家までの肩書きを持つ。
政治的にも?やり手″だったのだ。
「……『細胞病理学』を確立して、近代病理学の祖といわれるほか、『社会医学』『公衆衛生学』の面でも、偉大な活動を行った」。
「若いときから政治活動に入り、彼においては医学と政治が結び付いていた、といわれる。
後年、ドイツ進歩党創設者の一人としてビスマルクの政敵であったことは有名」……と『医学大辞典』(南山堂)にはある。

●一五〇年前の「ガン細胞・無限増殖論」
彼は、その「細胞病理学」で、こう主張している。
「ガン細胞は、ひとたび発生すると無限に増殖を続ける」。これがウィルヒョウの「ガン細胞・無限増殖論」である。
そして、一五〇年もの年月が流れた。
なのに、この古めかしくカビの生えたウィルヒョウ理論が「いまだ生き延びている」ことを知って、わたしは仰天した。

●「ガン細胞は無限に分裂・増殖を続ける」
「解説」を読んでみよう。
「……どんなガンでも、はじめはただ一個の目に見えない小さな細胞です。
それが、一回分裂すると二個になり、二回分裂すると四個、三回で八個……(中略)……四〇回で一兆個になります。
五〇回分裂したら、ガンは私たちの体よりはるかに大きくなってしまいます」
「正常な細胞の多くは、分裂を数十回くり返すか、またはDNAのコピーにミスが蓄積すると、それ以上の分裂能力を失ったり、あるいは?自殺細胞死。アポトーシス」″するように設計されています。
これは、不要な分裂や増殖を回避するためです。
しかし、DNAに異常のあるガン細胞は、分裂をやめず自殺もしません。
栄養さえ供給されれば、いつまでもいつまでも分裂・増殖を続け、ついには宿主(患者)を死にいたらしめます」(下線筆者)
つまり正常細胞と異なり、ガン細胞は「いつまでも分裂・増殖を続ける」と断言している。
みごとな!ウィルヒョウ理論だ。

●「人類は一〇〇万年前に滅びている!」
自らもガンに冒され、それを克服した元NHKディレクター、川竹文夫氏はNPO法人『ガンの患者学研究所』を主宰している。
その川竹氏は、現代医学にいまだ蔓延している「ガン細胞・無限増殖論」を?ウィルヒョウの呪い″と切って捨てる。
冒頭のように人間の体内には健康な人でも毎日数千個ものガン細胞が産まれている。
「それがウィルヒョウのいうように無限増殖するなら、人類は一〇〇万年以上まえに、とっく滅んでいますよ」。
まさに、そのとおり。
毎日、数千個も産まれているガン細胞が無限増殖せずに、われわれ人類が一〇〇万年以上も生き延びて来られたのは、ガン細胞の増殖を抑える免疫細胞があるからだ。
ウィルヒョウはその免疫細胞の存在に全く無知であった。
一五〇年も昔、それも研究より政治にかまけていたウィルヒョウが、これら免疫細胞の存在に気付かなかったのは、仕方ないだろう。>

まだまだ、過激な表現は続くのですが、このくらいにしておきます。
この文書は厚生労働省に、殴り込みインタビューを敢行した船瀬俊介氏のものと思えます。
もし、この文章が真理を突いているなら、ウィルヒョウなる人物が「鉄血宰相」のビスマルクの仇敵?政治家″でもあり、病理学者でもあったとすれば・・・・
当時の医学界に絶大な権力を示していたに違いありません。

しかも、その理論が橋本敬三先生の指摘されておられるように、間違ったもので、150年間信じ込まされているならば、中世のガリレオ地動説の悲劇と同じような状況にあります。

ウィルヒョウの「細胞はいずれも細胞から」とする細胞分裂は果たして事実なのでしょうか?

我々は中学校の生物で当たり前に習ってきたのだから、事実だと信じています。
これからご紹介する千島喜久男博士も「細胞は細胞分裂から」と信じていました。
ところが、1940年にとんでもない発見をしてしまったのです。

    ー真理を追究された千島喜久男博士ー

ニワトリの卵を材料に「胚の発生」を研究しているときのことです。
それまでの研究者は、胚子の生殖腺発生を観察する際に、胚子の中腎(生殖器の発生に重要な役割を果たす器官)と生殖腺を切り離して顕微鏡で見ていたのですが、千島博士は、切り離さず一体にして見たのです。
すると、中腎と生殖腺のできはじめのものには境がなくその付近には血管から出た赤血球が無数に散在。
それが、原始生殖細胞や生殖腺の細胞に分化、移行していく様子をはっきり確認することができました。
そのときの驚きを千島博士は、次のように述べています。

赤血球から生殖細胞その他へ移り変わっている状態を見た私は、はじめは唖然として、自分の目や頭を疑うほどのショックを受けた。
しかし、何百枚ものプレパラートを入念に調べてみたが、細胞分裂によるのではなく、赤血球からの変化するものであることを確認した>(血液と健康の知恵より)

細胞分裂ではなく赤血球から生殖細胞が出来ることを世界で最初に見つけたのですから、その驚きは心臓か止まるほどのものだったことでしょう。
しかし、ニワトリの卵が孵化してゆくまでのイメージは、私にとって納得がいきます。
まず、黄身の周りに赤血球が発生し、徐々集まり血管となり、心臓ができやがて組織、器官となっていく方が自然に感じます。
ですから、直感的には赤血球から細胞が生まれることを信じられます。

さて、ここまで長々と書いて来たわりには、引用文が多く、何やら自分の文章とは言えないブログとなってしまいました。こういう文章は、時間を長く感じさせるものです。時間泥棒になったことをお許し下さい。

そのためこの続きは、明日のブログに連載します。千島学説に興味をお持ちの方は、もう少しおつきあいの程宜しくお願いいたします。
では また!


佐伯惟弘