東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

「操体と生きる5」

近頃よく宮沢賢治の「アメニモマケズ」をよく目にする機会が多い。

私は学生時代から本が苦手な人間であったが、なぜか宮沢賢治の本だけはとても熱心に読んでいた記憶がある。
当時は当然ながら、その世界観は全く分からなかったが現在になって読み直してみると、その魅力がよく分かる。それは童話作家でありながらイノチの在り方に目を向けていること、また自然と連帯協調にあると思う。宮沢賢治の経歴等を見ていると如何に人は自然との共存を大切にしていたかがよくわかる。

宮沢賢治岩手県花巻市で産まれているのだが、彼が産まれた直後1896年に三陸地震による震災が起こっている。言うまでもなく彼は自然の猛威の恐ろしさ、恩恵を肌で感じながら生きていたのである。こういった環境で生きてきた彼だからこそ他の童話作家では感じる事が出来ない生命観、宇宙観が表現出来るのだと思う。

そして宮沢賢治のもう一つの魅力とは「不可視な世界」との繋がりを誰にでも分かりやすい童話で表現している所にある。宮沢賢治のコトバを借りると「心象のはひいろはがね」の世界であり、それはこのシャバの世界の本当の世界のようにみえる。また童話作家でありながら「細胞一つ一つには核があり、それは植物で出来ている」と書かれていたそうだ。まるでそこらの医者よりも人間のイノチを知っているかのような言葉に私は人間•宮沢賢治に魅了されていった。

私が本日、宮沢賢治を取り上げたのは宮沢賢治と橋本先生には共通点があると思ったからだ。橋本先生の著書には宮沢賢治から影響を受けたとは書かれていないがとても類似する点がある。それは自然との繋がり、自我を超越した自分自身との向き合い方、そして死んだ後に後の世代に残した影響力等が挙げられるが、なにより脳の使い方がとても「右脳優位」だということである。

この右脳を働かせるものの捉え方•見方は私からみれば「宇宙的」であり、「自在」という目に見えない時間•空間に目を向けている。それは頭が良い、悪いではなく脳の使い方が私達現代人と違うのである。もしかすると震災があった現在こそ約100年前に同じような震災を経験された宮沢賢治の思想や橋本先生の哲学が私達の本当に必要としていることではないだろうかと思うのである。