東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

とらわれない操体

お盆のせいなのか、猛暑のせいなのかヘンな夢を見た。

操体の仲間達と海外に遠征に行き、今日帰国するぞ、と言うときに、東京が未曾有の災害で壊滅したというニュースが入るのだ。ホテルにまとめて預けてあったパスポートを受け取り、それぞれのメンバーに配る。不気味なのは、未曾有の災害が何だかわからないのだが、飛行機はこれから成田へ向かう、という話だった。何だかリアルだったが、夢だな、と分かっていた。

まあそんなことは起こらないと思うけど。

私達はとんでもない転換期に生きている。
陰陽のサイクルは800年周期で訪れるが、先の「陽」のサイクルが終わったのは、1945年(昭和20年)。戦争が終わり、日本が大転換期を迎えた年だ。
今は本格的に「陰」の時代に入っている。次の転換期がやってくるのが、約730年というはるか先のことである。
男性原理が支配する1000年から1999年が終わり(物事は9年サイクルで動いている)、「1」が支配する最後のサイクル、1999年から2008年が丁度終わる頃、リーマンショックで世界が変わった。今年2011年は9年サイクルのうち「4年目」にあたり、「安定」または「大災害」の年にあたる。まさに「大災害」の年となった。このような転換期に生を受けたのはやはり何か意味があるのだろう。この世界を見ておけ、記録しておけということなのだろうか。

臨床家は皆気づいている。
クライアント(患者)が訴える愁訴の内容が変わってきていることを。

2011年7月6日、厚生労働省は、それまでの四大疾病(がん、脳卒中、心臓病、糖尿病)に精神疾患を加え、五大疾病とすることとした。現実にはうつ、統合失調症の数が増え続けているのである。これは陰陽のサイクル変化の影響とともに、それまでは精神疾患などは「女々しい病気」のように考えられていたようだが、病気に対する理解とともに、受診者が増えたという理由もあるらしい。

橋本敬三先生の時代は「正體術」でも「対なる動きを比較対照し、楽なほうに瞬間急速脱力させる」という第1分析でも間に合った。しかし、それは「陽」の時代仕様だったのだ。

橋本先生がなぜ「楽」ではなく「快」にシフトチェンジしたのかといえば、恐らく「陰」の時代が本格的にやってきたという直感と「楽では間に合わない」という実感ではなかったのだろうか。
三浦先生は5年の年月をかけて、第2分析(ひとつひとつの動きに快をききわけさせる)を体系化されたが、そこで「動けない場合に操体はどう対応すべきなのか」という、操体の盲点が明るみに出てきた。一つの手は、最大圧痛点に触れ、逃避反応を起こすことだが、これでは「きもちよさでよくなる」という操体の一番の特徴が活かせない。そこで、三浦先生が皮膚への接触という新たな分析法の体系化に着手し、それはほぼ完成しつつある。

私がここ数年本当に悩ましく思っているのは、多くの臨床家でさえ、殆ど第1分析しか知らないということである。「楽と快の違い」が上手く伝わっておらず、そこに「動診と操法の区別」が加わっている。「操体がわからない」という場合のおおもとの問題点は、楽と快の違いの捉え方である。

ちなみに、私達は「楽」「快」「不快」と、3つに分けて考えている。ボディに歪みが生じると「動かしてきもちいい」あるいは「動かすと不快」という「快不快の法則」が成り立つ。「楽」というのは、バランスがとれていて、何ともない、という状態である。なので「楽で何ともない」という状態に、「快」のききわけを持ち込むのは避けているのだ。
(バランスがとれていて、活力にあふれていて生きていること自体がきもちいい、という場合もあるが、これは特別だと思う)。

また、第3分析、皮膚へのアプローチは「陰」の性質の愁訴をもつからだに対して、非常に優しいということを伝えておこう。そして、操体は第3分析をも超越した、新たなステージを迎えている。いままでの「とらわれ」で操体や臨床に向き合ってはいられないのだ。

http://d.hatena.ne.jp/lovecats/20110819

ご興味のある方は、アタマの中で妄想を膨らませているのではなく、ホンモノの操体を体験して欲しい。京都、間に合います。
操体の門戸はいつでも開いているから。

何だか不死者とかタイムスリップとか今回の大震災とか、何だか明るくもなく、どよ〜んとした話題が多かったような気もしますが、100%ポジティブで明るくて元気じゃなくてもいいじゃん、という感じです。

私が今年一番ショックというか情けなかったというか世の中にはこんなヒトもいるんだなと思ったのは、東北の大震災に対して「東京の消費生活の戒めです」と言ったヒトがいたことです。それが、少なからず操体に関わっていた方で(今は無縁)何故、東京の過剰な消費生活の戒めが、東北に行くのでしょうか。それは、東北人に対して失礼なのでは。私は東北ブラッズなので、そう思いました。

師匠が、「もし、自分の妻や子供が被災したらどうなんだ」と聞いたそうですが(師匠も東北出身)「自分はそういう目にあったことがないから、それはわからない」と言ったそうです。正直言いますが、こんなヤツは去勢して島流しにでもしたろ〜かと思いました(すんません)。師匠にも不義理の限りを尽くした方ですから、仕方ないのかも。

同じ事を思い出しました。私の父が急逝した際、ある同僚が「私は親を亡くした事がないから、あなたの気持ちがわからない」と言ったのです。多分、こういう方々ほど、ご自身の家族に何かあった場合、めちゃくちゃ騒ぐんだろうな。

というか、肉親を亡くしたとか、災害に遭ったヒトに対してこういう事が言えるのか。凄いなと思った次第。これはすごい発見。ある種の無常観というか、こんなヒトもいるんだな、へー、という感じです。まあ、偽善的に「わたくしはそんな目に遭ったことがないのでハッピーだけど、おかわいそうに」というのもなんかイヤだな(笑)

そして、共通しているのが、皆50歳越えた立派な大人なんです。ふつう大人がこんな事言うんでしょうか。

まあ、いろんなヒトがいるからというので今回は終わりにするけれど、「痛みがわがんのががプロよ」という、橋本先生の言葉で少しは救われたかなと思います。

人の痛みがわからん輩は、プロじゃない。

というわけで一週間ありがとうございました。明日からは出雲の福田画伯の担当です。

京都のフォーラム、来週です。

東京操体フォーラムin 京都2011は8月28日(日)に開催されます。北村翰男(奈良漢方治療研究所、奈良操体の会)、三浦寛

Sotai Forum inMadridは、9月24日、25日の二日間、マドリードにて開催致します。三浦寛

2011年秋季東京操体フォーラムは11月6日(日)、東京千駄ヶ谷津田ホールにて開催予定です。