慶應義塾大学理工学部の前野隆司教授が説かれているものに「受動意識仮説」というものがあります。受動意識仮説とは脳科学分野の学説であり、判断などの意識は、脳が作り出した受動的反応をただ自覚しているだけという説があります。
昨日のブログで、自分が自由意志に基づいて行動を起こそうとする0.5秒前に、脳波で準備電位(Readiness Potential)というのが観測されることに触れましたが、五日目の今日はこの辺りの内容をもう少し書きたいと思います。
意識が「動かそう」と意図する指令より、無意識に指の筋肉を動かそうとする準備電位指令の方が0.5秒も前に働くということは、意識が判断を下す司令塔となる前に、意識でからだに0.5秒先に出す指令を先読みし、脳内ではすでに準備されているということになります。体が動くまでの時間が0.5秒必要ですので、この0.5秒の時間を埋めるための無意識の反応により、脳内の活動がとても大切なのだと思います。
その他の報告のなかでは、0.5秒前より早い2秒前には運動準備が始まることを報告しています。ハンガリーのブダペスト工科経済大学では、Laszlo Laufer氏とBottyan Nemeth氏が、ゲーム中のプレイヤーの動きに関して興味深い実験結果を発表しています。実験では、操作しているプレイヤーの心拍数、皮膚コンダクタンス(電気伝導度)、および脳の電気活動を計測し、プレイヤーが実際に操作を行なう2秒前に、皮膚コンダクタンスからそれを予測できることを発見しています。
脳波のμ波のパワーは運動が始まる2秒前にすでに低下していることからも、意志による動きより2秒前から無意識の反応が起こることが示唆されます。
脳からの指令(意識)でからだが動く前に、予備動作として無意識のからだの反応が起こることを書きましたが、現在はこの無意識の動きが体験・経験(練習などによる)による反応なのかどうか議論されているようです。
僕は無意識を鍛えるということは、からだの感覚である原始感覚を磨くことで可能だと思います。しかし、現在多くの人達が「原始感覚」(快か不快かききわける能力)が鈍っているような気がします。感覚をききわけることも考えるというように、あたまで考えすぎているため、結果的に原始感覚が鈍っているのではないでしょうか。これでは、からだの治癒能力も、からだの無意識の準備や反応も遅くなる可能性が考えられます。鈍っている原始感覚を呼び覚ますお手伝いが操体法の臨床では可能なのだと思います。
今日はこの辺りで・・・ありがとうございました。
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