東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

目指すところ

 佐助が担当する最終日です。よろしくお願いします。

 昨日は環境について脳科学からの報告を紹介しましたが、環境が大切ということは昔から言われていて、ことわざにも「朱に交われば赤くなる」という言葉があります。これは中国の古いことわざ「近墨必緇、近朱必赤(墨に近づけば必ず黒く、朱に近づけば必ず赤くなるという意味)」からきているようですが、良い友人や環境を選ぶことは大切だ、という教訓が含まれています。(故事ことわざ辞典より)

 裏付けというのは必ず後から存在します。これは手技療法の世界も同じだと思います。現代の医学ではEBM(Evidence Based Medicine)を大切に考えています。EBMとは「医療において科学的根拠に基づいて診療方法を選択すること」ですが、科学的根拠の裏付けをとる前には、方法と結果の仮定が必要ではないでしょうか。
 EBMはとても大切なことですが、EBMの前に手技療法の結果があり、そこから科学的根拠の追及のために、データ収集などの裏付けが後からついてくるといった順序で、現在の医療で行われている手技が存在しているような気がします。
 このように考えると、民間療法の手技方法を全否定はできないはずです。
 実際に橋本敬三先生も、40年前に三浦理事長に「自分のやっていることは60年先を行っているから、今理解されなくてもしょうがない」とおっしゃったそうです。これはいつが自分の行っていることが、科学的根拠により裏付けされて認知されていくということを言われているのだと思います。

 僕は人生の巡り合わせによって、操体という学びとご縁をいただきました。僕が操体という学びに対してできることは、操体法という臨床の科学的根拠の裏付けを行うということだと思います。
 もちろん研究施設にいるわけではないので限界があります。ですが、今できる臨床の科学的根拠の裏付けを続けていることで、どこからご縁が生まれ、更なる科学的根拠の裏付けが進むきっかけになるかもしれません。

 からだは理論通りにいかないものだからこそ、すべてが科学的根拠に基づいて診療方法を選択できないということは多くの医療従事者も分かっているような気がします。現代の医学ではEBMを大切にしているからこそ、医療従事者に認知してもらうためには、操体を学ぶ我々が少しずつでも科学根拠の裏付けを進めていかなければ、何年先になっても医療従事者との溝がうまらないような気がします。

 いつの日か操体法の臨床が、医師も含めたチームとして紹介や協力し合えるような環境が生まれたら、日本独自の診療が生まれるのではないでしょうか。

 一週間お付き合いありがとうございました。