たにぐち書店から毎年発行されている『手技療法年鑑』2008年度版に、当フォーラムの母体である、操体法東京研究会が掲載紹介されました。
フォーラムの実行委員会はこの講習の出身者を中心に結成されています。
『手技療法年鑑』は、鍼灸指圧、柔道整復の専門学校の紹介をはじめ、各種療法の詳細な紹介と学校、スクール、セミナーの紹介、現在の手技療法の社会的位置づけなどが書かれているものです。
操体法東京研究会は、今年で設立30周年を迎えます。
主宰は当フォーラム理事長でもある、三浦寛(人体構造運動力学研究所)。
なお、ここに掲載されている「操体とは何か」をご紹介するとしましょう。
操体法とは何か
操体法とは、昭和初期に仙台の医師、橋本敬三(1897-1993)がさまざまな民間療法を試すうち、高橋辿雄氏の正体術(整体とは異なる)にめぐり合い、創案・体系づけたもので西洋医学、東洋医学とも異なる、いわば日本医学とでもいうべき未病医学に基づく、診断、臨床法である。
操体法の初期は、正体術と類似する方法がとられ、客観的に骨格、関節の構造を診て、運動系の歪みを正す試みがなされていた。その方法は、骨格、関節の動きを二者択一的に比較対照させて分析し、辛い方から楽な方へからだを操つり、運動系の歪みを正すことによって、疾患、症状の治癒、改善をはかってきた。その後、客観的な見方からはなれ、生体の内部感覚に基づいて、生体のフィードバック機能をより洗練させていくため、快適感覚をより重視するようになった。結果、操者の決めつけを操法から一切排除し、からだの要求感覚に委ねる臨床への対応が急速に進められてきた。また、その一方で、患者の意識を介さず、からだの無意識に直接快適感覚をききわける皮膚体壁系へのアプローチも体系化されてきている。
操体法には、他に類をみない特徴がある。それは、診断も治療も患者自身に委ねていることである。つまり、患者自身が医療者の立場に立つことで、患者本人が診断し、治療する。本来、治療とは施術者が診断し治療する行為である。操体法の場合、施術者と患者の立場が逆転している。操体法は、それゆえ、患者自身の自力自療が成り立つ。
なぜ、自力自療が可能なのかというと、本人にしか分からない(認識、識別できない)感覚を診断、治療の要にしているからである。感覚をからだにききわけること、ききわけた快適感覚を操り味わうこと、これが操体法、臨床の特徴である。「ききわけること、味わうこと」これは、患者本人の責任分担であり、第三者(施術者)が直接介入することのできない診断と治療なのである。操体臨床における第三者の役割は治療に直接介入する立場ではなく、指導及びサポートしていく立場に立つだけである。
原則は"自力自療"
操体法の特徴の1つは治すことまで関与しないこと」である。どういう意味かというと、治すことはからだが一番よく知っているということであり、「治すことはからだにまかせればよい」のである。治すことまで関与するから臨床そのものが、難しいものになってくるのである。
からだが治す、治せる力とは、生命力である。その自然治癒力とはからだにききわけた、快適感覚そのものであり、操体法は、この生命感覚の快に従う臨床医学である。正確には操体法は手技療法とも、治療医学とも言えるものではなく、操体法の創始者である橋本敬三医師の言葉をお借りすれば「未病医学に基づく健康維持増進の医学」と言えるのではないだろうか。
又、操体法の特徴の1つに「症状、疾患にとらわれない」ことが上げられる。操体法には○○疾患、△△病を治す、という発想がないことである。「生活の間違いからおこるからだの歪みを正し、健康のもとをただす」ことが症状、疾患に対する操体法のとらえ方の原点になっている。そのため、からだの診方、症状、疾患のとらえ方が「運動系の歪みという異常状態(病態変化)から構造運動力学的に把握しているのである。
近年の操体法は、筋、骨格系のみならず、内臓筋系の不随意筋への問いかけ、皮膚を介して、からだの無意識に問いかけていくことによって、より質の高い快適感覚の診断が可能となり、あらゆる症状、疾患に幅広く対応できるようになってきていることで、介護や精神科的疾患を対象にする機会も非常に多くなってきている。