東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

凧揚げの思い出。

最近、凧揚げをしている光景を見なくなったなぁと感じる。
自分の子供の頃は、正月過ぎのこの頃はよく凧揚げをして遊んでいたと思う。


近所の駄菓子屋に行けば凧が売っていたが、自分でも作っていた記憶がある。
庭の隅っこに落ちている竹を小刀で割っていき、骨組み用に一本一本細長い竹ひごを作って、それを重ねたり縛ったりして骨組みを作り、骨組みに障子紙を張ってという感じで見よう見まねで作っていたが、これがなかなか上手くいかない。
小学校低学年の自分としてはバランスとか全然考えずに、売っている凧と同じ様なのを作って、それが頑丈だったらもっと高く上がるのではと考えてしまっていたので、頑張って作ったのに、自分で作った凧はなかなか思い通りに揚がってくれなかった。
こういう手作りの遊び道具や工作を作らせたら、もの凄く上手い人もいて、手際も良く
自分なら何日もかかって完成させるものを、みるみるうちに仕上げてしまう人もいた。
これが本当によく揚がる。


いつだったか、小学校3年生ぐらいの冬休みの日に通学路を歩いていると、田んぼの畦に腰掛けて凧揚げをしている3人組がいた。
真ん中が学年が3つ上の人で、右隣が同級生、左隣が1つ下の子。
同級生に「なにやってんだぃ?」と聞くと「凧揚げてんだぃ」とこちらに一瞬だけ顔を向け、後は空だけをじっと見つめている。
近寄って見て見ると、同級生と1つ下の子も凧を持ってきているが、田んぼの畦に置いてある凧には糸がついておらず、3つ上の人が揚げている凧だけが遥か遠くに小さく見える。
四角い形で字も絵も書いてない手作りのシンプルな凧で、真ん中に一本だけ尻尾がある。


3つ上の人は笑いながらやっているが見ている同級生と1つ下の子は真剣そのもので
どんぐり眼になって凧が横に傾こうものなら「ぅあ〜 ぁあ〜 落っちゃう 落っちゃう」
態勢を立て直すと「おぉ〜〜 危ねぇ危ねぇ」と一喜一憂しながら、はしゃいでいる。
そのうち2人の凧糸を足しても足りないぐらいに遠くまで揚がっていき、3つ上の人が
ポケットから小銭を出し「凧糸かってきてくれるかぃ」と同級生に言うと、同級生は役に立てることが嬉しいのか「ハイッ」と学校では、したことがないような綺麗な返事をして
タッタッタッタ〜と一目散に凄いスピードで駄菓子屋まで駈けていってしまった。
(いつもは豆腐一丁おつかいに行くのもぶーたれるくせに)
この当時、駄菓子屋で売っていた凧糸は一束だいたい30mぐらいだったと思うが、3つつなげているわけだから80メートル以上はもう揚がっている。
そのうち私の同級生が凧糸を買って帰ってきて、その分もつなげると100メートル以上になってきた。
凧はどんどん小さくなっていき、その分ちびっ子達の歓声は大きくなり自然とギャラリーも一人また一人と3つ上の人の同級生や私の同級生、もっと下の子達も加わって10人ぐらいのちびっ子集団が出来てきた。
その集団が凧が傾いたりする度「ぅあ〜 おぉ〜」と大騒ぎ。
そうこうしていると、また凧糸がたりなくなってきた。
「また凧糸買ってきますか〜?」と私の同級生。
「そうだな〜今度は2つ買ってきてもらうかな。・・・記録に挑戦してみるべぇかな〜」
「おお〜〜」歓声とも雄たけびともとれる声があがる。みんなワクワクだ。
そして買ってきた一つ目の凧糸をむすび、束を少しずつゆるめていくと、さらに凧は遠く小さくなっていき、目を凝らしていないとすぐ見失ってしまう程で,途中から見ている人には、指差して教えても確認できないぐらいになってきた。
凧糸もこのくらいの長さになってくると、大きく放物線を描くようになってきて、まるで空から大きなすべり台が降りてきているようだ。
揚げている人も糸の感触をたよりに真剣そのものだ。
まわりのギャラリーも口数を少なめにして食い入るようにして空を見つめている。
しかし、それからしばらくして、揚げている人が突然「アッ!」と声をあげた。
「なに?」「なに?」「どうした?」「どうした?」「切れっちゃったんかぃ〜?」
[あ〜〜ぁ 飛ばされっちゃったよう。]
目を凝らして見てみても、もうどこにも見当たらない。
「あ〜〜〜ぁ」みんなしてへナヘナヘナ〜。みんなの緊張の糸も切れてしまった。
「でも凄かったよな〜」「俺ぁ あんなん始めて見たよ〜」「いや〜 良く揚がってたな〜」
ギャラリーも思い思いの感想を口にして、一人また一人とバラけて帰っていってしまった。


結局、最初の4人が残り、揚げてた3つ上の人が余った凧糸と最後の凧糸を手繰って二人に返し、棒切れに今までの凧糸を手繰って巻きつけている。
凧を揚げていた時は夢中でどんどん長くしていたが、凧が飛んでいってしまい、残った糸を手繰って巻きつける作業というのはなんだか地味で寂しく、つわものどもが夢のあとという感じさえあった。
陽も傾きかけて一段と冷え込んできていたが、自分達も木の枝に引っかかっている糸を落としたりして手繰って巻きつけるのを手伝った。
巻きつけ終わった糸は随分と大きな糸だまになっていた。
(私が思っていた以上の長さで揚がっていたのかもしれない。)
「こんなデッカイ糸だまができちゃったでぇ・・・・・綿あめ!」
「?・・・・・・?」
みんなで顔を見合わせてから「ワッハッハッハッハ〜」
「俺ぁ ギャートルズ(はじめ人間)に出てくるデッケェ肉に見えたな〜」
「ワッハッハッハッハ〜」
「俺ぁ〜」と近くにあった棒を刀にみたて、その棒を糸だまで軽くたたきながら
「ポン、ポン、ポン、おぬしもワルよの〜。ちょっとデカすぎるか〜? ちょっと重てぇ」
「ワッハッハッハッハ〜」
「じゃあ これを使って何か、やってみるんな〜」
「じゃあ から揚げ」
「ワッハッハッハ そんなんダメさ〜 さっきギャートルズの肉が出てたんべ〜?」
「じゃあ・・・・・ ♪あのこ〜どこにいるのやら〜♪」
(糸だまをマイクにみたてて五木ひろしの真似、相当照れている)
「ワッハッハッハッハッハ〜」
「じゃあ・・・・・ まあ”〜そのお〜〜」(田中角栄の真似)
「ワッハッハッハッ だからマイクにするのは、さっきやってたろ〜?」
「ワッハッハッハッハッハ〜」
なんでも楽しくなってきてしまう。
気持ちが沈んできても、ちょっとしたことで楽しい方向へ舵をきって向かう。
それが自然に出来ていたあの頃、遊びの中からそれを学んでいたのかもしれない。


自分としては、この日揚げていた凧の作り方を教えてもらおうと思っていたのに
すっかり忘れてしまっていた。
結局その後はその人も中学に上がって一緒に遊ぶこともなくなり、あの凧の作り方は
わからず仕舞いになってしまった。



それからしばらくして、ゲイラカイトなる外国製の凧が出てきた。
あの三角形をした、目玉の絵が書いてあるやつだ。


なんだか長い文章になってきてしまったので
ここから先は明日に回そうと思います。



友松誠




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