8月に入って、13ヶ月にわたる操体法東京研究会の定例講習の1期が修了した。
第1、第3日曜午後は、1期以上受講者が学ぶ、通称「臨床講座」。
第2、第4日曜は、通称「特講」。今回は特講から臨床講座へ進む人が多い。今回臨床講座を終えて、引き続き臨床講座で学ぶ人も何人かいる。
東京操体フォーラムのサイトに「講習を受けて。先輩諸氏の声」というコーナーを設け、現在はフォーラム実行委員の投稿をまとめてあるが、今度からは受講を修了した方々にも書いていただくことにした。10月頃には全文掲載できると思うので、楽しみにお待ちいただきたい。
講習を受けるには「覚悟」がいる。受講料は決して安いとは言わない。しかし、それは大いなる先行投資として、後々何倍にもなって帰ってくるのである。世の中には受講料が安くて短期で習いたいという要求もあるようだが、本当に身につけたければ、時間をかけて、相応の身銭を切って勉強すべきだ。
また、何か習うのだったら、その道のトップに習うほうがいい。それも、ヘンなクセがついていない、まっさらな状態で一流の先生に学べば一番いいのだ。『もうちょっと勉強してから来ます』という人は、「もうちょっと勉強」の間に、ヘンなクセやオマケをつけてくる。私が『自己流で三年やるんだったら、一流の先生に習ったほうがいい』というのはそのためだ。
また、13ヶ月というのも決して短い期間ではない。
1期修了しても2期修了してもまだ学びたい、という意志を抱かせるのは操体の学びが実にスリリングだからだ。これは「一体操体はどこまで行くんだろう?」という「目が離せない」状況に置かれるからだと思う。また、勉強していくうちに「本物を習っているんだなあ」という自信と誇りも芽生えてくる。
それから、自分のからだが変わるのも実感できるだろう。今まで余り注意を払わなかった自らの『内なる感覚』が目覚め、『快適感覚』とは『きもちよさ』というのがからだに通ってくるとからだは本当に変わる。
操体で人生が変わる、というのは本当のことだ。
操体は進化している。この講習では「楽な方に動かして、2〜3秒たわめて瞬間急速脱力」(我々は第1分析と呼んでいる)は習わない。橋本敬三先生が85歳のある日、師匠に「きもちのよさでよくなる」と言われてから生まれた「楽ではなく、快適感覚をききわけさせる動診」(第2分析)を1期目に習い、更に進化した第3分析(刺激にならない皮膚への接触による感覚のききわけ)は2期目以降に習うことになる。この過程は『ぞくぞくする』ような驚きの連続である。
受講生のバックグラウンドは様々だが、大抵は症状疾患別の対症療法を習ってきている。
クライアントの愁訴も「ここが痛い」「今度はここが痛い」というものばかりだ。ところが操体は「症状疾患にはこだわらない」上に、分析法(診断法)の数がもの凄く多い。
両手関節(右、左、両手)、両足関節(右、左、両足)の各8つの動き、3×3×8=72に加えて、受け手のポジション(仰臥、伏臥、側臥、立位、その他ポジションは無数)がある。さらにこれに加えて、下肢の伸展、体幹の動診、上肢伸展などのダイナミックな分析(動診)が加わる。
それを聞くと受講生達は「一体どうやって動診を選ぶんですか?」という疑問を抱く。
○○にはこの動診と操法、△△にはこの動診と操法、という考え方はしない。しかし動診(分析法)は無数に存在する。それならば、一体どうやって「動診」(分析法)を選択すればいいのか。これがおおかたの受講生の初期の疑問である。
「勉強していくうちにわかりますよ」
「操体は『分析法』の勉強がメインであり、如何にして動診、操法を選択するのかというのが学びです」
と、説明するのだが、受講生は最初はやはり怪訝そうな顔をする。
実際に、「腰痛にはこの動診と操法」「膝の痛みにはこの動診と操法」というように、パターン化して教えれば教える方もラクだし、覚える方も短期的に簡単だと思うだろうが、この教え方の最大の欠点は「例外だったらどうするか」ということに対処できないことである。
臨床はまず例外のほうが多い。
敢えて言うならば、症状疾患別の動診と操法という考え方は、学生時代の「点を取るためのテスト」「○×式テストに勝つための勉強」みたいなものなのだ、。
本当に勉強になるのは社会人になってからの応用なのである。実際の臨床でも、応用のほうが重要なのは言うまでもない。
講習が進むにつれて、受講生の顔からは曇りが消えていく。それは丁寧に時間をかけた学びの結果なのである。
ここには「学び方を学びに来ている」のだ。私は三浦先生よりは少ないものの、受講生諸氏よりほんのちょっと「操体の学び方」勉強しているだけなのである。だからこれからも操体の勉強は続く。
8月28、29日は大徳寺玉林院にて「東京操体フォーラム in 京都」開催
9月18、19日スペイン、マドリードにて「操体フォーラム in マドリード」開催
2010年操体法東京研究会定例講習は9月から始まります。