大きくなってから、通っていた幼稚園や小学校を訪れると、何だか随分小さい建物に見える。幼稚園、小学校の時は、集団登校していたので、年長組、年少組が一緒になって道を歩いていくのだが、毎日えらく遠く感じたものだった。幼稚園の頃は、身長順だと前から2番目くらいのチビだったのである。団地は東京オリンピックの頃に開発されたところで、現在の千葉県稲毛区にあたる。千葉の小高い丘を切り崩して作ったものだ。幼稚園と小学校は丘の上にあった。毎日毎日朝は坂を登って行かなければならないし、幼稚園は小学校より200メートル以上先にあった。幼児の私にとって、毎朝の幼稚園通園は毎日が遠足みたいなものだったのである。
数年前のある日、私は当時住んでいた団地の一室から、幼稚園まで歩いてみた。余りに近いのと、急な坂道だと感じていた坂は、短い緩やかな坂だった。これも自分が大きくなったからなのだろう。幼稚園の園舎は立て替えられており、昔の面影はなかったが、それでも小さく見えた。もっと驚いたのは、幼稚園の隣にある小学校の小ささである。小さいと言っても私の通っていた小学校は、千葉市内で2番目に児童数が多かった。私が3年生の時、3つの分校に分かれたが、それでも大きな学校だった。坂の終点に幼稚園があり、坂の角に小学校のプールがあった。そのプールも「こんなに小さかったっけ?」という感じである。
要は私が大きくなったからなのだが、子供の時は何でも大きく見えるんだな、と改めて感じた。
ということを書いていたら、購読しているメルマガが届いた。
偶然にも面白いことが書いてあったので、引用してみよう。
『思い出の場所を訪れてみる』
思い切って青春時代の思い出の場所を訪れてみましょう。
小、中学校や高校、大学など、自分の通っていた学校を訪れることで、
あの頃の想いがよみがえってきます。あの頃と同じ場所に立つだけでいいのです。
家から学校までの道のりをたどり、周辺を歩き回ってみるだけで十分です。できれば、「今のあなた」から、「その時のあなた」にひと声かけてあげましょう。
それだけで、あなたの中の「子供心」は目を覚まし、癒されることになるのです。
へえ、小さい頃の思い出の場所所を訪れるということは、こういうことなんだ。
小さい頃の思い出の場所と言えば、今年3月11日に津波の被害に遭った、私の両親の故郷、気仙沼だ。
小学生の頃は、夏休み毎に帰省していた。私は東京生まれなので、最初はおばあちゃんが何と言っているかわからなかった。母も私と話すときは標準語で話すのだが、親兄弟と話している時は何だかさっぱりわからない。しかし二週間もいると、私も段々東北弁がになってくるのだった。
母方の実家は江戸時代は庄屋をしており、広い畑を持っていた。青臭いトマトや、甘くないとうもろこし、祖母が作る蒸し菓子や団子などを食べて過ごしたことを覚えている。祖母と母と妹と、江戸時代から付き合いがあるという鳴子温泉の湯治場に行くこともあった。二週間くらい母方の実家で過ごすと、夏休みをとった父が東京からやってくる。
父が来たら、父方の実家に移動する。港の近くで、伯父が魚市場に勤めていたりしたので、毎朝気仙沼の魚市場に行った。
楽しい思い出である。
母方の実家は大船渡線の気仙沼駅から二つ離れた、陸前高田市に隣接したところで、山の中だが、父方の実家は気仙沼の魚市場からも近い高台にある。避難所となっていた気仙沼小学校、中学校のすぐ下で、テレビ中継では、父方の墓へ行く道が映っていた。祖母は私が4歳の時に他界しており、祖父が高校3年の時に他界してから、家には誰も住んでいなかった。
そして、誰も住んでいなかった家は、津波の被害に遭わなかったのである。親戚は皆無事だったが、家を流された家族もあった。テレビ中継では、見覚えのある風景が無残な様子を見せていた。
私が愛してやまない、気仙沼あさひ鮨も津波で流されたらしい。地震後、電話が全く通じなかったので、心配していたが、丁度仕事で仙台に帰省した平さんが、仙台の駅ビル(仙台駅ビルにあさひ鮨の支店がある)の人に聞いて、気仙沼の人達の無事を知らせてくれた。
その後、川崎隆章氏(秋のフォーラムで講演予定)から携帯に「8月から気仙沼あさひ鮨営業再開って、テレビでやってたよ」というメールが入った。
ゴールデンウィークに、松岡正剛さんが東北を訪れたという話を聞いた。気仙沼にも足を踏み入れたそうだが、絶句してしまったそうだ。俳句でも詠もうと思ったそうだが、あまりの酷さに一句も詠めなかったとのことで、私は気仙沼に行きたいと思ったが、少し躊躇している。
フリーアナウンサーの生島ヒロシ氏は父のTBSの後輩である。同郷ということで父とは親しい付き合いがあった。生島さんの妹さんは、お母さんの遺骨を持ったまま気仙沼入りし、そこで被災した。先日財布だけは見つかったと聞いたが、身の周りに、被災して亡くなった方が確実に存在するのである。
気仙沼にはいつ行けるだろう。
果たして「小さい頃の私」を見つけることができるのだろうか
畠山裕美
東京操体フォーラム in 京都は来週開催です
東京操体フォーラムin 京都2011は8月28日(日)に開催されます。北村翰男(奈良漢方治療研究所、奈良操体の会)、三浦寛他
Sotai Forum inMadridは、9月24日、25日の二日間、マドリードにて開催致します。三浦寛他