設計者の仕事と大工の図面
「原寸は図面でわからなかったことを大きくすることで見えてくるんや。図にはあるが木を組み合わせるとなれば、実際には不可能な形だったり、強度的に無理なことも出てくる。小さな図面だったらそれでいいと思った部分が組み上げられないとかな。
それを確認するために原寸図を描くし、木拵えはその原寸図を元にやっていくからな。
(中略)
図面屋さんの図面を直してやれよって、西岡棟梁が言ったんだ。ここが俺が描く図面と設計士の違いや。意匠と実際の違いかもしらんな。」
芯の仕事と面仕事
「いまは、昔のように梁に曲がった木なんかあまり使わねえな。それは使いづらいからだな。本当は曲がってたって建物を造るのにはかまわないんだ。芯を決めて計算すればいいんだ。
(中略)
いまは木工機械がよくなっているから、機械を使えば寸法通りの面が真っ平らな材ができちゃうわけだ。そうなると大工も面から計算するようになるわけだよ。
(中略)
これでは建物を造るのも文化やとすれば、文化が痩せるな。伝承の技も限られたものになってしまう。
だから、木工機械ができたために技術的なものがすごく落ちてるし、木の本当の癖を見るなんていうのもなくなっちゃうんだよな。いらねえんだよ。」
これは人間のからだを扱う臨床においても同じである。
出来上がった時にピタッと納まっている建築物とは、治療においては、からだの要求感覚をかなえる臨床が最高のものとなるだろう。
半蔵