東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

ミラーニューロン

二日目です。よろしくお願いします。

昨日のブログの内容ではあまりに僕の農業の顔が出てしまい、本当に臨床をしているのかという声も聞こえてきそうなので、今日は臨床で面白い体験が続いたので報告したいと思います。
僕の勤務するクリニックのリハビリテーション室では、僕の臨床する空間を仕切りで区切り、個室のようにして治療ベッドが置いてあります(佐助ゾーン)。この佐助ゾーンに患者との1対1の空間を作っていますが、小・中学生の患者の大抵の場合は、親御さんが同伴し隅の方で治療を見ています。
僕はいつものように操体法で、患者のからだにききわけ快適感覚を味わってもらっていると、親御さんまでからだが揺れだし指先がピクピク反応しているのです。治療後の患者自身のからだが変化したのは当然なのですが、見学していた親御さんに「からだに不調をかかえていますね」と聞いてみると、「実は最近、肩甲骨周囲の痛み(肩甲上神経の痛みと考えられます)が気になっていたのですが、息子の治療も見ていたら、自分まで気持ちよく感じられ、気が付いたら肩甲骨の痛みが軽減してるんです」とビックリされていました。
このようなことが続きましたが、これは決してプラセボ効果や気のせいではないとことが脳科学の分野ではわかりつつあるようです。
ある報告では、頸部関節可動域制限(回旋運動)と痛みがある患者に対して、セラピスト(治療者)の動きを患者に「動きをよく見ておいてください」と言語教示し、セラピストが頸椎回旋運動を患者の前で行い見せ、患者が動きを理解したところで、回旋運動の際の目線の位置について「どの辺りをみているか」言語回答させて、頸椎回旋の動きと目線の協調性を観察してもらった結果、動きを観察していた患者の頸部関節の可動域と痛みが改善されていたとのことです。これらの機序として信迫氏らは、視覚誘導性の運動制御に特化した前運動皮質が活動し、その運動を他者が行っているのを観察する課題では、生物的運動の視覚情報処理に特化した上側頭溝領域が活動し、観察による視覚方向認知課題では、上側頭溝領域に加えて、前運動皮質が活動することを機能的赤外光イメージング装置を用いて実証したそうです。運動観察では、実際に運動を実行する際に活動する運動関連領野(前運動皮質や下頭頂葉)の神経細胞(ミラーニューロン)が、同じ運動を観察した場合にも活動するという特性があり、運動イメージにより実際の運動時と同様の大脳局在が活動するという神経学的根拠があるということです。
この報告以外にも、Lui氏らの報告では、上肢で物体を操作する運動時と、その操作運動のイメージ想起時、そして他者による同じ操作運動の観察時における前運動皮質の脳活動を機能的核磁気共鳴画像法(fMRI)により調査しており、全条件で全運動皮質が賦活することを明らかにしています。
 Dickstein氏らは脳卒中片麻痺患者に対し、歩行イメージを6週間行い、歩行パラメータの改善のみならず膝の関節可動域にも改善があったことを報告しています。
 
僕が今回経験したことも、患者の親御さんが視覚により操体法の臨床を視覚から快適感覚を味わっている姿見て、イメージが脳内で体験しているのと同じ反応が起こったということですから、からだの神秘的能力には本当に脱帽です。
ありがとうございました。


三浦寛 操体人生46年の集大成 "操体マンダラ Live ONLY-ONE 46th Anniversary"は2012年7月16日(海の日)に開催致します。

2012年秋季東京操体フォーラムは11月18日(日)津田ホールにて開催決定