東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

盲点その1

 4日目の今日からは、僕自身が操体を学ぶ以前、理学療法士として病院勤務していた時に「あれ・・・本当にこのままでいいのかな?」と思うようになった事柄を書いてみたいと思います。よろしくお願いします。
 少子高齢社会によってこの保険が財政を圧迫しているという問題が起きていますが、現在の医療は保険診療を中心に行われています。この保険診療のおかげで、患者として医療機関を受診すると、年齢によって異なりますが1〜3割の自己負担で受診ができます。医療機関は患者が受けた診療について、患者負担以外を医療機関が保険者(市町村や健康保険組合等)に医療費を請求(レセプト)します。この時不当の診療と審査する所で判断されると、レセプトが返却されてきます。診療の原則として、診断名がなくては請求されず、診断名によってどのような治療をしたのかという流れが必要となります。したがって、現代の医療では診断名の付いた部位に対して治療するという考えを基に、医療が発展してきたのだと思います。これはとても素晴らしいことで、更なる発展も期待したいと思います。
 僕が理学療法士として病院勤務をしていたとき、「これでいいのかな?」と思ったことは、痛みを主訴として来院された炎症期にある患部を理学療法としてアプローチをする際に、患部を刺激することで受容器を興奮させ、炎症や痛みを増悪させる可能性や、患部をかばうことで全身への影響など考えると、患部だけを診ていてよいのだろうかと思ったのです。
 橋本先生の「からだの設計にミスはない」の著書のP34にも同じようなことが書かれています。「現代医学では、腹の中のどこそこが痛くなったら、そこの所を治すことに力を尽くす。その箇所を非常に詳しく研究し分析する。〜途中省略〜この立って動くからだと、からだの中にある物とが別な物だと思っているんです、現代の医学は。そして皆さんもしらずしらずのうちにそんな考え方になってしまっているんじゃないでしょうか」とあります。
 現代の医療の中で、診断名を必ず付けて、診断名に対して治療・アプローチをするという流れが保険でも定型付けられています。これは診る視野が狭くなってしまうという盲点が生まれ、そればかりか全身の連動の動きなどを阻害する可能性も考えられるような気がします。
 人間のからだは二本足で立って動くことによって、からだが理に適った状態に合わせながら、動きに対してからだを変化させるようにできていることを考慮しながら、また環境を含む息・食・動・想の営みがどんな影響を受けているのかも考慮する必要があると思います。操体にはこれらすべての学びが含まれているからこそ面白くもあり、奥が深い学びなのだと思います。
 今日はこのあたりで・・・ありがとうございました。