東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

「人生の豊かさ」について 〜その7〜

今年最後のブログとなったが、今年一年を振り返り私自身も環境も大きく変化した一年であった。何が変わったのかと言うと「学び」に対しての姿勢である。今までの私は自分の興味の範囲内しか学ぶことをしなかったのだが、今年は様々なことを吸収しようと思ったので時間があれば図書館や美術展等にも足を運び己の人生の肥やしに出来るものと向き合うようになった。姿勢が変わることで自分に入ってくる情報やその捉え方も大きく変わってくるものであり、私の臨床に対する捉え方、向き合い方も大きく変化させたのである。その結果、人のカラダを診させて頂くことにおいて「カラダ」という器だけでなくその人の「心」にも意識を向けるようになったのだ。
こういった変化のきっかけにはある本の出会いがあった。それは今年の春に購入した「こころと治癒力」(ビル•モヤーズ 小野善邦=訳 草思社)という本である。何気なく購入したので内容は全く分からなかったのだが不思議な事に月日の経過と共にわかるようになってきた。それは私が操体の学びを深めてきたのと橋本敬三先生、三浦先生という師と繋がっているから分かるようになったのだと思う。このたった一冊の本が私に生きるということ、そして臨床のヒントを与えてくれたのである。それは人間の悲願である健康はカラダだけでなく心の健康とも密接に関係しているということである。以前にもブログで橋本敬三先生の「アンコロ餅」の話を書いたがこの本もまた臨床において「想」の重要性を説いている。いかなる病にもその根底には心に何らかの問題が生じているということ。そこには執着、怒り等が存在し人体に影響を及ぼしているというのが改めて分かったのである。こういった心の病が「息・食・動」の営みのバランスを崩しカラダに何らかの症状・疾患をもたらす。やはりこの「息・食・動・想」4つの生命の営みが調和していかなければ心とカラダのバランスはとれないのである。そして生命の営みは何事にも「ありがたい」という感謝の気持ちを持つことが全てを調和に導き、そして己の人生も豊かにしていくものだと確信している。

またこの本にはこんなことが書かれていた。
「治療(ヒーリング)は心配り(ケアリング)から始まる」
操体の臨床においても同じことが言える。講習の中で常々「診断」の重要性は言われているが、この診断とは何もカラダの形態を診ることだけが診断ではない。患者の心理状態も診断の重要なポイントになる。患者が訴える症状・疾患の根底にはその人の抱える心の病も存在すると私は思う。そういったことを診るのが人のカラダを診る側の人間には絶対的に足りていないような気がする。症状・疾患を抱えてきた患者に対してこういった診断をしないで治療をするのはただの慰安にしか思えてならない。患者の心を診て治療し始めて臨床なのだと思う。

こういったことが出来るようになるには、まず私自身が己の生き方を正していかなければならない。そのヒントは操体の中だけでなく、操体と繋がっている様々な学問にあると思う。これからは臨床の技術だけでなく人生を豊かにする様々なことを学んでいこうと思う。


今年一年どうもありがとうございました。1年を通し好き勝手に思っていることを書かせて頂きましたが、やはり「インプット」だけでなく「アウトプット」していかなければ大切なことが入ってこないと感じた年でした。来年はもっと学びを深めてより良いことを書いていけたらと思っています。

来週は半蔵さんの出番です。お楽しみに。