東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

病気と心とからだの歪み④

昨日のつづき

 人間のからだの中でのエネルギー分布の最大の調節器は、実は「心」の力である。この心の調節器がよく調整されていればいるほど、「体性系」、「自律系」、「内分泌系」というからだの三系統の需要をうまく按分して、エネルギーを理想的に配分することができる。これに反して、心の暗い領域での働きが三系統のうちのたったひとつに偏ってしまうと、エネルギー配分にも偏りが生じて生活や健康にマイナスの影響を及ぼしてくる。

 外に向かって開いた心は、積極的な精神活動をするので、通常はプラスのエネルギーがやや優先的に誘導される。プラスのエネルギーは、からだの活動を活性化し、生理学的な言葉でいうと、この状態は、自律系統の活動と内分泌系統の活動が体性レベルでのからだのすべての要求を充たせるよう、よく調整されていることを意味している。

 ところが、心の力があまりにも拡大されてプラスのエネルギーが優先されすぎると、からだの活性化にアンバランスが生じ、健康状態にある種の異常をもたらすこともある。それはからだが弱くなったように感じるのであるが、これは、修験道の行者やあらゆる宗教の神秘主義者が、修行の初期段階に経験する現象としてよく知られている。行者らの意識が拡大し、生活が洗練されてくるにしたがって、驚いたことにからだのあちこちに今までなかった障害が感じられるようになるのである。内臓の働きが鋭敏になり、たとえば以前はどんな食べ物にもびくともしなかったはずの胃の腑が、食事の不節制にすぐ反応して具合が悪くなったりする。聖者の生涯の記録にはよく、その聖者が病に罹ったことがでてくるが、このうちのいくつかはおそらく精神力があまりにも拡大しすぎ、それに対する肉体的な鍛錬の方が間に合わなくなってしまった結果であろうと思われる。

 これはちょうど、からだに対して不相応に「啓発されすぎた」そういう意識が、神経回路に大電流を送り込んだようなものである。神経系はまだ大電流を受け入れる準備が調っていないため、あちこちでブレーカーが落ちてしまうわけである。このような理由から瞑想で精神の向上をはかるときは、インドでは必ずハタ・ヨーガの教えに従った厳しい肉体的鍛錬を同時に行なうことになっているのだ。こうすることによって、意識的な精神の開発と意識的な肉体の開発とが、ちょうど具合よく歩調がそろい、バランスが保てるのである。

 これらとは反対に、限られた心の力しかなく、しかも暗黒の領域を心にたくさんもっているような場合、生み出されるものはマイナスのエネルギーである。マイナスのエネルギーはからだを不活性化させる。生理学的にいうと、これは自律神経系と内分泌系の活性低下を意味する。からだは、その潜在能力以下の限られた範囲でしか働かないことになる。したがってその人間の生活態度は全般的に消極的になってしまう。こうした意識の活性低下がもっと進めば、当然その行く先には心身の異常である病気が待ち受けているのだ。

 世の中には、からだのエネルギーが不思議とどこかへ消えて行ってしまうような人々がいる。そんな人たちは決まって不活発なタイプで、ほんのちょっと過労気味になっているとか、からだに支障があるともう気落ちしてしまい、実際に痛みでも感じようものなら、のっけから病気負けしてしまう。バイ菌の感染に対して絶好の餌食となるのは決まってそういった人たちであって、その感染も大抵は重く、また複雑な経過をたどることになる。

 西洋医学の内科医や外科医も、こうした人たちには手をやいているのが現状だ。そんな患者は抵抗力に欠け、実にひ弱な存在であることを医師たちは経験上知っている。普通の人なら時間の経過とともに良くなってゆくような病気でも、こうした不幸な人たちが罹ると、ありとあらゆる余病を併発して長引くことになる。普通ならまったく安全な外科手術が、こうした消極性の患者たちにあっては妙にひねくれた思わぬ方向に発展する。手術の傷が治らず化膿していったり、胃腸が活動しなくなったり、腎臓が平常の機能を発揮しなくなったり、血圧が低下したり、体力が消耗していったり、精神状態も不安定になったり、ときには死につながることすらある。

明日につづく


「2014年秋季東京操体フォーラム」 開催決定
今回は11月22日(土)23日(日)の二日間開催いたします。
メインテーマは「操体進化論」です。
特に、22日は場所の都合上、人数が限られておりますので
ご参加希望の場合はお早めにお申し込み下さい。
詳細は以下、「東京操体フォーラムHP」をご確認ください。
http://www.tokyo-sotai.com/?p=813