東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

正義⑦

昨日のつづき

 

 最終日は、昨日に引き続いて、正義に関して最も核心部分である真と偽について述べてみる。  生における真と偽の相関関係を理解するためには、自己の内の虚偽を、また絶えず自分につき続けている嘘を理解しなければならない。  

 

 これらの嘘は自己の内にある緩衝システムがつくりだすものである。  無意識のうちに他者につく嘘とともに、自己の内部でつく嘘をも打ち壊すためには、緩衝システムを破壊しなければならない。  

 

 ところが人間は緩衝システムなしでは生きることができない。  自己の内にある緩衝システムは機械的に人間の動作、言葉、思考、感情をコントロールしているからである。  もし緩衝システムが破壊されれば、コントロールはまったく効かなくなってしまう。

 

 人間はコントロールなしでは、たとえそれがただの機械的なコントロールであっても、存在することはできない。  意志を、すなわち意識的コントロールをもっている人間だけが緩衝システムなしでも生きることができるのである。  この緩衝システムのない状態こそが正義なのである。

 

 したがって、自己の内の緩衝システムを壊し始めるなら、同時に意志を発達させなければならない。  ところが、意志は注文に応じて短期間に発達させることができないために、自分は、破壊された緩衝システムと、まだ十分に強くなっていない意志とともに置き去りにされることになるかも知れない。  

 

 最後に、この緩衝システムという言葉について、補足説明をしておきたい。  緩衝システムは人間の内部に自然によってできたものではなく、無意識的にとはいえ人間自身によってつくりだされたものである。

 

 それができた原因は、人間内部の多くの矛盾・・・・・・感情、共感、言葉、動作などの矛盾にある。  もし自分が生涯にわたって自己の内部のあらゆる矛盾を感じるとしたら、今そうしているように平静に生き、行動することはできないだろう。 人々は絶え間ない摩擦と不安をもつことになる。  

 

 我々は、自分の人格の中の異なった 「私」 がいかに矛盾し敵対し合っているかを見逃している。  もしこれらの矛盾をすべて感じたら、人は自分が本当は何者であるかを感じることだろう。  人々は自分が、気が狂っていると感じるに違いない。  誰しも自分が気違いだと感じるのは気持ちのよいことではない。

 

 それ以上に、このような考えは人から自身を奪い、自分のエネルギーを弱め、自尊心を奪い取る。  自分は何とかしてこの考えを消してしまわなければならない。  矛盾を打ち壊すか、矛盾を無視し、感じないようにしなければならないのである。  ただし、人間は矛盾を破壊することはできない。  

 

 そこで、もし緩衝システムが自分の内部につくられたら、矛盾を感じるのをやめることができ、相反した見解、矛盾した感情、言葉の衝突からくる衝撃などを感じないでもすむようになるからだ。

 

 

 明日からは香実行委員に 「正義」 のバトンがわたります。  お愉しみに!