東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

操体庵ゆかいや物語(13)

                お告げ?
                            

私は、月に2〜3回、地元の小学校で絵本朗読を約15分(午前8:30〜45)行っています。
この日の担当は6年生。
70年程前に作られた『桃太郎』を再発刊したもので、著名な日本画家が、丹念にそしてリアルに描いています。


ヘタウマに描かれた絵本が多い昨今、このような昔の絵本は、子供達にとって、新鮮なようです。


6年生は、山村留学の子をいれて14名と、地元の小学校としては大人数。しかも、個性派集団のため、賑やかです。


「むかし、むかしあるところに、、、、」


私は、座ったり、立ったり、歩いたり子供達の前で結構派手なパフォーマンス。
文章が長いため、しっかり1ページを読んだあとに、絵を見せるようにしました。


そして、鬼の征伐をし、宝物を鬼から譲り受け、お供(とも)の犬、猿、キジと一緒に帰るシーン。


「桃太郎は、宝物を車にのせ、、、」
「えっ、えっー!車?」(全員が、目を丸くしてびっくり顔)


何百年も前の童話に車(自動車)。子供達は、もの凄いギャップを喜び、想像力を豊かにしています。
「そうやで、車。どんな車か想像してや!」


「猿が、車を後ろから押し、、、」
「えっ、えっー!車を押すの?」


桃太郎がハンドルを握り、その自動車を猿が押すシーンを想像している子供達。


「犬は綱をひっぱり、、、」


子供達は、随分混乱している様子で、静かになってきました。そこで、おもむろに、
「さあ〜て、一体どんな車?ジャン!(古い!)」


子供達に話題の場面をみせました。
そこでは、木製のおおきな車輪の荷車を、桃太郎はじめ、犬、猿、キジが押したり引いたりして運んでいます。子供達からすれば、昔々のリヤカー。


裏切りと納得の表情を浮かべた子供達に、間髪入れず、
「ここにある、この宝物は一体、何でしょう?」


などと、隠れ蓑(みの)を指さし、話題をそらす私。
車という漢字を横にすると、『十田十』こうなります。これは、この荷車の
形を基にして出来ています、とでも言えばよかったのですが、、、、(次のクラスでは、そうしよう!)


まあ〜こんな感じで絵本朗読終了。


気持ちよく車を飛ばし家に向かっていると、
野菜の無人販売所(新鮮野菜が100円)で、知り合いのご夫婦に出会いました。彼らは今日、我が家に来ることになっていたのです。


「やっぱり、ここは涼しいな。音がないから落ち着く。」


確かに、聞こえる音は、虫や鳥の声、前を流れる川のせせらぎ。そして、風の音。


「たしかに、、、」などと、ちょっと自画自賛。


奥様は、来月出産を迎え、おなかが大きくそり出しています。その彼女に操体施術。
臨月を迎える女性には、皮膚に問いかける渦状波が一番いいようです。左右の足にある圧痛点に施術すると、お腹の赤ちゃんが嬉しそうに動きます。立法体の箱が胸の方まで動くときもあります。きっと、赤ちゃんが両足でキックしているのでしょう。


操体施術も終わり、彼女が居間で昼寝をし、私もゆっくりしているとき、思いがけない人の訪問がありました。


茅葺き職人のMさんです。


「こんにちは、お久しぶりです。2005年から屋根の状態を見てないので、見に来ました。」
「それは、どうも有り難うございます。どうぞお入りください。」


Mさんは、我が家を1999年に葺き替えた時の職人さんです。大学を卒業後、サラリーマンからリストラ、茅葺き職人へ。現在は、地元の女性と結婚し美山に在住。
大工のHさん同様、これからの茅葺き民家を模索しています。


1999年、我が家で、イギリスから茅葺き職人を招き、イギリスの技術で日本の屋根を葺き替える実験をおこないました(1999年12月15日、テレビ東京で、『マギーさんちの茅葺き大作戦』として1時間放映されました)。


その理由は、日本の茅葺き民家の衰退を留める一助となるきっかけを作りたかったからです。
一万年以上前から脈々と続く茅葺き民家。これは、世界に誇る遺産であります。
昭和30年代には、400万軒もの茅葺き民家が存在。ところが、高度成長を機に、年々衰退し現在では、100分の1にまで減少。もはや風前の灯火です。


ところが、海外に目をやると、イギリスでは、茅葺き民家は、国の重要遺産として登録され減少することはありません。茅葺き職人を養成する学校もあり、茅葺き民家はイギリス国民の羨望の的であります。


オランダでは、新築の茅葺き民家が年間2000棟建てられています。もはや、茅葺き民家はエコロジーを象徴する建物として、富裕層を中心にブームをおこしているのです。


何故、日本ではこの素晴らしい文化財が守れないのか?色々要因がありますが、コストの高さが一因です。


そこで、イギリス式の茅葺きに注目したわけです。
50年も保ち、コストが懸からず、しかも明かり窓まで付けられる(日本の葺きかたでは、15年程度しか保ちません)こんな素晴らしい屋根なら、実験する価値があります。


そこで、国際交流基金等の協力を得て、全国の茅葺き職人の方々を招き、技術交流を目的としたワークショップを行いました。


あれから9年経ちましたが、東、西、南側の屋根は全く傷みがありません。北側に少し雪にやられた箇所がありますが、たいしたダメージではありません。


最近になって、雪と屋根との付き合い方法が分かってきたので、私は、北側の一面も50年保つと考えています。
もし、葺き替えが必要となっても、軒から2mほどの屋根下部。屋根上部は問題ありません。


「もし、北側の面の一部を、葺き替えなければならなったら、また、ワークショップをしましょうよ!」
尾坂さんは、ワークショップを随分気に入っている様子。


それもそのはず、Mさんは、前回のワークショップで知り合った茅葺き職人の誘いで、アメリカへ行くことになったのです。
当時、世界で二番目の金持ちが、日本の茅葺き民家を米国・カリフォルニア州で建てることになり5ヶ月滞在。たいへん貴重な経験ができたそうです。


そんな尾坂さん、私の操体のチラシを見て、


「佐伯さん、名前変えたんですか?」


「変えたというか、佐伯惟弘というのが私の本来の名前なんです。」


「私の戸籍の最初に書かれたのが、惟弘。ところが、1週間後に、役場から、惟という字は当用漢字にないので認めない、との通知があったそうです。それで、私の惟の字に×印が付き、私は、佐伯弘となったんです。」


数年前、惟が再び当用漢字に認められたため、家庭裁判所に行き、もとの名前に変更しようとしたのですが、使用していないという理由で却下されました。
そのため、現在、使用するようにしています。


Mさんとの会話がはずみ始めると、私の生い立ち等を話す雰囲気になり、普段目にすることのない実家の資料を見て貰うことになりました。


その中には、私が生まれ育った茅葺き民家(神社の社務所)のことや系譜等があり、簡単な歴史が綴られています。そのなかでも、松根東洋城に関する資料はかなりの量。


松根東洋城の思想は、操体の思想と何ら変わることはありません。いずれ紹介したいと思いますが、今回は省略。
実家と松根東洋城の関係を手短に説明いたします。


一畳半ほどの空間に俳人・松根東洋城が2年近く住まわれたため、この社務所は、一畳庵と呼ばれるようになりました。


松根東洋城(1878〜1964)は、宇和島藩地代家老・松根図書の長男権六の次男。母は、宇和島藩伊達宗城の次女・敏子。夏目漱石に俳句の教えを受け、終生の師と仰いだ。宮内省、式部官を歴任、1954年芸術院会員。


ここで、実家と伊達藩の仙台、橋本敬三先生とも少し関係が出てきます。宇和島は、愛媛でありながら伊達藩であり、その伊達藩主と血の繋がった東洋城先生が、私の実家で生活しながら、俳句指導をされました。


私の祖父は、東洋城先生の内弟子。東洋城先生が滞在されている間、厳しい指導を受け、俳人・佐伯巨星塔(本名:惟揚)として、地域の人々に俳句指導にあたりました。


また、東洋城先生が東京に帰られた後も、我が家との交流は続き、私の叔母が最後まで、先生のお世話をしました。独身を通した東洋城先生は、我が家が家族も同然だったようです。


そのため、物心ついた時から、「東洋城先生」という言葉が、私の頭上を常に飛び交っていました。私が母の胎内にいるころから、シャワーを浴びるように聞いていたと思います。


そんな東洋城先生にとって、私は初孫のような存在。
私の大好きな赤胴鈴之助の竹刀、胴、カツラ、お面等をプレゼントして戴き、はがきで文通までしていました。


そんな資料をMさんに見せながら、


「この実家の茅葺きも、トタンを被せてしまい誰も住んでいません。でも、いつか昔のような茅葺きの姿に戻したいですねえ。」
ぽつりともらしました。


「発願すればいいんですよ。」


「、、、、、、、、、」


「もしかしたら、東洋城先生がボクを通して、このように言わせてるんじゃないですか?」


「、、、、、、、、そ、そうかもしれないですね。こんな資料、普通、他人に見せないですもんね、、、、、、何か不思議な感じ。」


3年ぶりに突然、絶妙のタイミングで訪れてくれたMさん、、、、それって


『一畳庵を東洋城先生が滞在されていた時のように戻して、伊達藩発祥の操体を、いずれ機が熟した時に、ここで普及しなさい。』

         
というお告げなのでしょうか?


佐伯 惟弘



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