東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

猫の日

こんばんは森田です。
三浦先生からバトンを引き継ぎました。
1週間、おつきあいよろしくお願いいたします。


先生の足底筋の話、面白かったです。
操体の臨床では重要な膝裏谷(ひかがみ)、
またちがった意識で触れることになれそうです。
どうもありがとうございました。



さて、今日は2月22日。
『にゃんにゃんにゃん』で、猫の日だそうなので
今日は仕事先の猫の話をひとつ。



先日の福田画伯の小太郎くんの日記(?)にもありましたが、
操体の施術中に、猫が寄ってくることがしばしばあります。
「私が猫にモテるから」ではなく、
操体をやっている」波動に引かれて寄ってくるようです。


ある患者さん(Aさんとします)の飼い猫のサンタ君は、
Aさんが横になったとたん、
足の間に『挟まり寝』をしにきたり、
おなかや背中にのり、『香箱をくんだり』します。
Aさん曰く、「普段はしないのに、操体を受ける時だけのっかってくる」のだそうです。


「邪魔しないでね〜」とからだから下ろされては登り…の繰り返しを経て、
Aさんの隣に横たわり、しっぽだけからだにくっつけて
何かを味わっている様子です(しっぽだけでも触れているのが彼のポイントらしい)。
いつも「2人と1匹で操体を味わっているのだな〜」と施術しながら感じています。



以前このAさんのうちに、
ブチャという、事故で半身不随になった猫がいました。


彼はガッチリした体格のオス猫でしたが、交通事故の後、
前足だけでからだを引きずって移動するため(スピードがでない)、
この家の玄関に知らない足音が近づくと、すぐにこたつの中に逃げ込んで
客が帰るまで、絶対に出てきませんでした。


必要以上に音に慎重になり、家族の人にしか全く気を許さなかった猫。


私は通いはじめの2年ほど彼の姿を見たことがなく、
「最近ご飯を食べなくなって、食べても吐くばかりでかなり弱ってきた」
という話だけ聞いていました。
Aさんが皮下に栄養を点滴してなんとか生きていたようです。


ある日Aさんがいつものように、操体を受けようとこたつのそばに横たわりました。
そして施術が始まって数分。


ごそごそ。


なんと半身不随の猫が前足で下半身を引きずってこたつから出てきたではないですか。
そして、まるで「僕も味わいたい」というように私の前に横たわりました。


当時私は皮膚へのアプローチをはじめたばかりで、
何をやればよかったのか正直よくわかりませんでしたが、
とにかく落ち着いて呼吸になる触れ方で接しました。
彼は目をつぶって、ただ黙って心地良さそうにしていました。


マッサージのようなアクティブな刺激よりも、
ただ気持ちのよいというにふれているだけで良かったようです。


腰骨が浮き出るほど弱り、自力で移動できなかった彼が、
こたつからでてきて、家族以外の人に自ら近づくということ自体、Aさんには驚きでしたが、
もっと驚いたことに、その日の夜は久しぶりに自分からご飯を食べ、
しばらくの間元気を取り戻したということでした。


私の施術が良かったからではなく、
彼自身が気持ちのよさを聞き分けて、味わったことが治療になったのでしょう。


また、Aさんが気持ちの良さを味わう波動を彼が感じ、
それをもっと積極的に味わってみようと、
勇気を出してこたつから出てきてくれたことも快適感覚のなせる技ではないでしょか。
「イノチには気持ちの良さで治りたいという意志を持っている」
という、三浦先生の言葉が思い出されます。



その後、数ヶ月ほどしてその猫はなくなりましたが、
余命宣告よりずっと長く生きました。


猫は頭で考えたりしません。
ただ、気持ちのいいことを選んで、味わって生きています。
気持ちのよさを味わうことで、からだに治しをつけていたのでしょう。


他人が「ああしてやろう、こうしてやろう」と考える治療は、
イノチが必要していることと一致するとは限りません。
施術者として、何がイノチにとって必要なのかを知りたければ、
からだにきいてみればよいのです。


私は猫から、そんなことを学んだような気がします。



森田珠水



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