東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

9時間の旅(1)

さあ〜て、皆さん。
4月25日(日曜9:30〜16:35)には東京操体フォーラム分科会が、青山コンフォートで開催されるのを、ご存じでしたか?
これは、従来行っていた東京操体フォーラムの分科会。
臨床家を対象にしていた東京操体フォーラムの敷居を、少し下げ、対象を臨床家のみならず、学生・一般の方々に広げたものです。
その実行委員長には、明るい知性派で、底知れぬ実力を持つ山野真二氏。副実行委員長には、これまた明るく美しい知性派で、DJ風のブログが評判の小代田綾氏。
お二人とも、素敵な感性の持ち主で、東京操体フォーラムとは、一味違った色合いのセミナーになっています。

内容を、一言で説明すると、“橋本敬三先生のDNAを検証(顕彰)し、温故知新を実践、発表する場”ということになりますか?

山野実行委員長、これでいいですよね!

盛り沢山な内容のうえ、お手軽な参加費。
皆さん、お誘い合わせの上、是非ともご参加ください。
あなたの生き方を問い直すいい機会、そして、どこか懐かしい、でも新鮮な出会いに驚かれることでしょう!

さて、それでは本題に入りましょう。
先日、鍼灸を学び始めて1年の区切りになるテストがやっと終了しました。
ところが3月には、もっとも難しい進級テスト。
3年生の卒業テストにパス出来なければ、1年留年という制度があるのですよ。なんという、ハードな学校!!!
(もう少し、学校のシステムを調べておけば良かった・・・などと、ちょっと弱気になりそうです)
そんな節目に、学校がすること。
それは、文集作り!

ということで、私がクラスを代表して、ブログ風に書き上げました。今回はそれを掲載する事に致します。
少し長い文書なので、二日に分けてのスタートです!

        9時間の旅 (1)

冬休みに入って早々の12月23日。
青春18きっぷを使って京都から東京への旅をする事に。
このきっぷは、11500円で、5日間普通列車に乗り放題。つまり、2300円で全国どこでも旅する事のできる1日周遊券の5枚セット。
ちなみに京都から東京までおよそ9時間かかります。

本、教科書、雑誌、弁当を持参。
流れる風景を横目に、時折窓ガラスに映し出される私の横顔を少し気にしながらの沈黙の旅。
程よい暖房と、車窓からののどかな日差しが眠気を誘います。
そして、ガタン、ゴトン・・・・

「あれ?衛生学の古屋先生が、最近のレールは、継ぎ目が無いので、ガタン、ゴトンといわないとおっしゃっていたけれど・・・・確かにその通り!」

ガタン、ゴトンとからだを揺さぶる音はありません。騒音を小さくし、快適な環境を目指している事がよく分かります。
しかし、この長い長いレールを、一体どのようにして取り付けるのだろう・・・?
などと考え始めると、様々な妄想が飛び交い、まとまりません。
すっかりお地蔵さん状態になってしまった私は、

「そうだ、体温を計ろう!」

突然バックから体温計を取り出し脇の下へ。
最近、興味を持っているのが体温。
まだ、計り始めてから3週間程しか経っていないので、いい加減な事しか言えないのですが、体温にも大自然の法則があるようなのです。

私の場合は、起床時、36,0℃前後。それから徐々に上がって行き、午後4時頃がピークで36,9℃から37,0℃まで上がります。ちなみに暖房のきいた列車で午後2時に計ると、37,0℃)
そして、夜になると一気に体温が下がっていき、眠る前になると35,4℃位になります。
(もっとも、こんな事は、2年生になれば生理学 第7章「体温」で体温の概日リズムとして、しっかり学ぶのですが、そんな事は全く初耳でした。無智であるが故の気付きは、本人にとって宝物。まあ〜、1年坊主に免じて許してやって下さい)

ここで思い出す事は、肝の蔵血作用。

「夜、臥床すると眠くなるのは、多量の血が肝に環流し、脳にゆく血が少なくなるからです。
四肢の血も少なくなり肝にしまわれてしまう。そして、動き出すと肝にしまわれていた血を速やかに四肢にほどよく配分する。」

血流と体温の関係を、肝の働きを通して見事に言い当てています。東洋医学的見地に、ただただ感服。

さて列車は、浜松駅終点に着き、上り列車に乗り換え。
列車は、地下鉄のように長いイスが向かい合わせに並んでいます。
「次は、金谷(かなや)、金谷です。」
若い車掌が、私の前で突然ふらつき、おっとっと。
そのふらついた一瞬のイメージを瞼に焼き付けます。

「確か・・・右足に重心が掛かり、掛かりすぎたその反動で左足がややふらついた・・・」

達人なら、一瞬で車掌のからだの歪みを見つけ出し、その治療箇所と手順を直ぐさま指摘できます。ところが、凡庸な私は、その流れを読み取る事は出来ません。
天然自然の法則に従った生き方であり、療法である操体を学び、随分月日はたったのですが、まだまだ、何も分かっていません。

それでも、呉竹学園という学びの場で、操体の基本理念である身体運動の法則に関して新たな気付きに出会いました。

身体運動の法則とは、操体の創始者・橋本敬三医師が体系づけたからだの天然自然な使い方、動かし方です。
からだの自然な使い方を重心安定の法則。からだの自然な動かし方を重心移動の法則といいます。

重心安定の法則に説かれてある「足は親趾、手は小指」は、からだの使い方における基本原則。
からだの使い方は、その中心が腰に集約されていなければなりません。

1) 重心が両足親趾の付け根にかかる事。
2) 肘がからだの正中線に集約され、脇が締まるには、手の小指を運動作用点にして使う。あるいは、小指に運動力点がかかるように使う。

以上の2点を解剖学の授業を通して、骨格の構造上から考えてみました。すると、思わぬ事に、小さな小さな骨が大切な役割をしている事に気が付いたのです。
                   (つづく)



佐伯惟弘