東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

私にとって操体とは「生体実験その2動」

操体における「息食動想」の考え方の中で実行委員が一番試行錯誤を重ねているのが、この「動」に対しての考え方だと思います。
私がこの「動」に対して研究しているのが、操体とスポーツの融合です。
操体とスポーツは相関関係で言えば真逆に位置します。クライアントの中にもよく勘違いされている方がいて、私は普段からテニスとかバレーなどスポーツをしているから健康には自信があるんですよ!と鼻息も荒く言われる方が多々いらっしゃるのですが、ここに大きな落とし穴と勘違いがあるのです。
スポーツをしているから健康なのではなくて、健康だからスポーツが出来るのです。スポーツで健康になれるのであれば、プロアスリートは病気知らずで、怪我もしない!理屈になりますが、そうでないことは周知の事実です。
身体を動かさないより、動かす方が健康に良いだろう位のイメージで殆どの方はスポーツをしているのだと思いますが、そこにスポーツ安全神話があるのです。スポーツの語源が現実逃避や非日常って言う位なので、身体のことや健康のことなど考えているわけがないのです。

ではスポーツを行うために重要なことは何でしょうか?実はそれが「運動」なのです。ここが混乱し易いところなのですが、スポーツと運動は混同しやすいですが、全くの別物だと一般の方がどれだけ理解していらっしゃるでしょうか?スポーツが非日常であるとすれば、運動はまさに生活密着とでも言うべき我々が生涯を通して行うべき必須なものなのです。
クライアントの方達にも日常的によく言うのですが、長くスポーツをしたいのなら、最低、週2〜3回は運動を行う必要があります。この話しをすると殆どの方が「え〜っ!?」って言いながら無理無理って言われます。でも、それが出来ない方がスポーツを行うべきではないのです。社会へ出てからのスポーツだからそんな、部活の様に一所懸命やる必要ないじゃなぃ・・

そうなんです、部活の様に毎日やるものでは無いからこそ、運動と平行することで傷害を防ぐのです。社会人にとってスポーツの大きなリスクは間違いなく怪我です。スポーツで怪我して会社を休んだりすれば、リストラの対象にでもなってしまうのが昨今です。
アキレス腱断裂、骨折、関節障害など私の処へいらっしゃるクライアントの怪我も様々ですが、その原因の殆どはスポーツを楽しむ以前の「運動不足」なのです。
最低限でも行って欲しいのが、「体幹部」「下半身」の強化です。スポーツ障害の殆どが体幹部と下半身に集中していますので、最低限の筋肉武装が必要だからです。一時期、女優の森光子さんが毎日スクワットをしているから元気なのよ!とテレビや取材等で話されてから、ご年配の方々の中にもスクワットのやり方はよく分からないけど、長生き出来るからいいらしい!というスクワット万能都市伝説まで生まれた。あながち嘘ではないのですが、スクワットは簡単ながらフォームを間違えると逆効果になるトレーニングの一つなので、指導を行っても一番間違ったやり方を覚えられている代表種目の一つです。
私の仕事の一つはこの様にテレビ、マスメディアで伝えられた曖昧な情報を正しく一般の方に伝えていくのも大切な仕事の一つなのです。

この様々なトレーニング指導で役に立つのが操体です。特に“身体運動の法則”は全てのスポーツとトレーニングに応用が利き、指導が可能です。
特に一番役に立つのが「手は小指足は親指」の教えです。
私はこの教えだけで指導をしていると言っても過言ではありません。それ位この教えには身体使いのエッセンスが全て詰まっているのです。
スポーツ経験者は意識・無意識の中で体得している人も居るのですが、その殆どは朧気ながらに理解しているだけかもしれません。
これをより明確に、立位の際の体重の乗せ方、意識の持ち方を何となく立っている時と、明確に“拇指球”に意識をおいた時では、大きく変化します。拇指球に意識をおくとは地球そのものを味方に付けたも同然で、地球が自分にとって抵抗になるのか補助をしてくれるのか!?位に大きく変化します。

同様に上肢小指の使い方もマスターすれば、無駄な上半身の動きとロスが解消され、疲労感少なくプレイが出来たり、肘の使い方に無駄が無くなるので、道具を使う競技は振り抜きがスムーズになります。
競技によって、上肢小指と下肢拇指球、この二つをどの様に組み合わせるかをしっかりと体系付けることが出来れば、現在以上のパフォーマンスアップは確実に望めるでしょう。

我々臨床家が理想とするのは“未病医学”であって、病ありきではないのです。
ですから我々に求められるのは「ケア」と「メイキング」の両輪です。
症状疾患が出てから対処するのは当たり前としても、出来うる限り再発しないための身体作りを指導することも必要なのです。そのための身体作り「メイキング・アドバイザー」としての資質が今後の臨床家にはより求められてくる要素だと考えます。そして操体の「動」の部分にはその“ケア”と“メイク”両方のエッセンスが濃密に凝縮されています。
今のスポーツ界は結果を出している選手なり団体なりが正義となっていますが、そうではなく、もっと根源的な部分で日本人の特性に合った最大限の力を発揮出来る方法があるはずです。人間の内在されたパワーをどうコントロールするかが、今後の日本スポーツ界が世界と戦うために残された最大の課題だと考えます。操体がそのための一助となるべく追求して行きます。