先日、近所を散歩していたときのことです。
住宅街のなかで「遺跡見学会→」の張り紙が目につきました。
「え、こんなところに、遺跡?」と
しばらく状況が飲みこめずその張り紙の前に立ちつくしていましたが、
見れば、次の見学会の時間がちょうど始まるところだったので
とりあえず参加してみることにしました。
会場は、都営住宅の跡地。
白い塀に囲まれていて、中がほとんど見えない場所だったので
まさかここで発掘調査が行なわれていたとは思いもしませんでした。
私の住まいのすぐとなりには「川」が二本流れています。
そして、川が合流しているポイントがあるのですが、
その自然にできた三角地帯に、1900年前の集落があり、
私が知らなかっただけで、ここ数年に渡り
周辺の発掘調査がすすめられていたようなのです。
小学生のときに地域の郷土資料館で見たような
「竪穴式住居跡」や「地層の断面」などを前に
専門調査員の丁寧な説明を聞いていると、
当時の古代人の生活が立ち現れてくるようです。
「実際にここに住んでいたのか」と思うと
ご近所さんのような気がしてきます。
30分の見学会は、期待以上に面白かったのですが、
中でも「台所」の説明を聞いていて、私はハッとしてしまいました。
調査員の人「この丸くて、土の色が黒くなっているところが、
当時、火を使っていた場所。今で言う台所ですね。
この円形の周りにこうやって土器の破片が置かれていますけど
これは何で置かれているのか、わかりますか?」
私の心のつぶやき「(なんかガスコンロの五徳みたいに見えるな…)
調査員の人「はい、そうですね。これは煮炊きするときに
土器を置く五徳みたいなものだったと考えられています。
むかしの人も割れた土器をこんな風にリサイクルしていたんですね。」
その瞬間、古代人が暮らしのなかで考えていたことが、
とても身近に入り込んでくるような気がして、
「1900年」という時間が
一瞬消えてしまったような気がしました。
遺跡を通して古代人の暮らしや、思考感覚を教えてもらっているような
そんな30分間でした。
東京は杉並区の小高い場所に位置するこの遺跡から
高い建物のなかった当時は東京湾まで一望できたようです。
古代人は当時、暮らしの営みをどんな風に感じながら
生きていたのだろうかと、考えてみるきっかけになりました。