ふいに思いつき行動できる有り難み。街を出て数時間走る場所。
遠くから近くなる山の麓につき、身支度を整え、登り始める。
山の山頂をめざし、地を踏み締め、カッパをきて、雨に打たれ、
その勢いとその激しさと、皮膚の感触を味わう。
何も考えられなくなり、ただ感じるだけになり、ただ前に進み、
身を沈め、どこかで休めるところを探す。
始まりの時をイメージしてみると、人間と動物の間には違いが
なかったのだろう、と理解できる。
その頃は、あらゆる生き物が地上に生活していた。
人間は、動物に変身したいと思えばできただろう。
また、動物が人間になることも難しくなかったのかもしれない。
どちらにしても、大した違いはなかったんだろう。
生きているものは、時に動物だったし、ときには人間だった。
みんな同じ言葉を話して、その頃の言葉はきっと、魔術のようで
言霊は神秘的な力を持っていたことだろう。
出まかせに発せられた言葉も、非常に強い効果を生むことだって
きっと、あっただろう。
勢いのある言葉は、たちまちにして生命を得てしまう。
その生命の力で、様々な繋がりや、願いを実現してきたのだろう。
「山」に入ると言葉は力だと感じる。
ただし、そんなことを説明したらすぐにダメになってしまう。
昔は、そう、はじまりの時は、万事が全てそんな風だっただろう。