東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

やまのはなし2

学生時代、探検部に所属し訪れ登った山のなかで、新潟県の巻機山(まきはたやま)のことが時たまふっと思い出されることがある。日本百名山の一つでもある。

 

冬の巻機山でかつて命を落とされた先輩の慰霊を目的に、部員全員で年に一度この山に登ることが部の大切な行事となっていた。自然を前に、命を失うこともあることを年に一度感じる節目の日であった。

 

早朝、日の出前から登山口を出発し、各部員自分のペースで歩みをすすめる。

前半のルートが結構きついわりに地味なルートがしばらく続く。

そして山頂まで順調に登っても片道4時間くらいはかかるので、初めて巻機山に登った時は、正直これから毎年慰霊登山でこの山に登ることを億劫に感じていたことを覚えている。

 

しかし、不思議なもので、2年目に訪れ、また3年目に訪れてみると、この山の良さを感じていることに気が付く。地味な山道を抜けて標高が高くなってくると高山植物が見渡せるひらけた景色になっていて、その地点に来ると、「あぁ今年もここまで来たなぁ」と何とも言えないじんわりした気持ちになったものだ。今では私にとっては特別な山の記憶となっている。

 

そして、意外なもので、こうして日常生活を送っていて思い出されるのは、実は前半の地味なルートを黙々と登っている時のことだったりする。

 

重い荷物を担いで、自分のペースで歩みをすすめる。

足運びのリズムと、それに重なる呼吸の音。

そのバランスがくずれてきたら、しばしの休息。

腰を下ろしてぼーっとしているときに感じられる風のきもちよさ。

 

片道4時間の「マイペース」と向き合う時間。

忙しくしているときに、その時の記憶、

間のときのことが、ふっと思い起こされてくる。