東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

最終日です。よろしくお願いします。
操体の創始者である橋本敬三先生は、85歳のある日(1982年)「きもちのよさをききわければいいんだ。きもちのよさで治るんだからな」と、三浦理事長に言われたそうです。この「きもちよさでからだは治る」というシンプルな言葉のなかには、深い大きな真理が隠れているはずです。からだの反応や現象には神秘的な感じを受けることが多くありますが、一つ一つの学びを深めていくことで、操体の真理を追究することに繋がれば、自己の人生のなかでの営みを学ぶわけですから、きっと自分を魅力的な意識へと成長できるかなと思い、学ぶ姿勢を大切にしていきたいと思っています。

脳内での快のききわけについて、報告を紹介したいと思います。
快の予測に関与する部位としては左前頭前野の活動が活発に働き、不快の予測に関与する部位は右前頭前野、前部帯状回の活動が活発に働くという報告があります。また他の報告では、光トポグラフィーと呼ばれる計測装置を使い、脳表面の血流を調べた結果、強い不快感は左右の前頭前野の腹側の血流が増し、強い快感情は左の前頭前野の背側の血流が減ることが報告されていて、快と左脳に関係があることが示唆されます。
快と不快の判断については、情動に関係する扁桃体が関係することを、猿の脳を利用した実験を小野氏が発表しています。これによって、快・不快が直接的に情動と関係することがわかります。
扁桃体で「快」と判断されると、エンドルフィン、セロトニンGABAドーパミンアセチルコリンなど、脳内に様々な神経伝達物質が産生されます。これが身体に変化をもたらすわけです。なぜこのように何種類もの神経伝達物質が産生されるかと言うと、「快」と言っても、「快」にもいろいろな種類があるからです。例えば「快」の中でも、安心感ではセロトニン、高揚感ではドーパミン、快感ではエンドルフィン、禅をやった時のように静謐さではGABAが分泌され、これらに伴い、副交感神経優位状態になるとアセチルコリンが分泌されるそうです。だいたいは複数同時に出ることが多いようです。これによって脳内の血流量が増加したり、神経伝達速度の向上などの変化が現れるため、集中力など様々な知的能力の向上が発現し、更に涙や筋肉の弛緩(リラックス)など身体にも影響が出てきます。
操体法では、からだに快の有無を確認し、味わいたい要求感覚の有無の確認をおこないます。これは「快」の種類の選択によって、治癒能力のある「快」をからだに選択していただくのに大切なのです。
「きもちよさでからだは治る」というシンプルな言葉のなかには、からだにとってとても複雑な反応が起きているわけですから、操体を臨床としてやっていくには、一つ一つ学びを深めていく日々の精進が必要なのだと思います。
一週間お付き合いありがとうございました。

三浦寛 操体人生46年の集大成 "操体マンダラ Live ONLY-ONE 46th Anniversary"は2012年7月16日(海の日)に開催致します。

2012年秋季東京操体フォーラムは11月18日(日)津田ホールにて開催決定