東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

腹式呼吸

つづき

 からだの中にあるその 「肚」 は物理的には存在しない。 それは一つの不在、それは一つの 「無」 なのだ。 そして、武士道の修行のすべては、その 「肚」 に注意を向けることにある。 武士はそのためにある呼吸法を編みだしている。 その呼吸を続けて、それと同調して物静かな身のこなしを養う、それが 「腹式呼吸」 である。 操体創始者橋本敬三医師もこの腹式呼吸を勧めていたのは、こういった理解があったのではないだろうか。

 

 通常、我々は胸から呼吸している、すなわち、浅い呼吸である 「胸式呼吸」 が横行している。 このように腹から呼吸しないのは、死の恐怖のせいかも知れない。 なぜなら、お腹から呼吸したら、その息は 「肚」 まですぐ届いてしまうからだ。 そうなったら、死の感覚に触れてしまう、だから死を恐れて我々は浅い呼吸を身につけるようになったのであろう。

 

 それが証拠に、怖がっているときには呼吸は浅くなる。 いつであれ恐怖が自分をさらってしまうような時には、深く呼吸することができない。 その時、たちまち呼吸は浅くなってしまう。 あらゆる恐怖は根本的には死の恐怖である。 我々は意識的にはそれに気づいていないかも知れないが、からだはどこに死があるかを正確に知っており、そっちの方へ行こうとはしないのだ。 

 

 操体では 「頭ではなく、からだにききわける」 という言葉の誘導を行なうが、その誘導原理になっているのが、「からだの無意識に問いかける」 ことなのである。 なぜからだなのか? そう、からだというのは頭より長い間存在してきている。 それは生物誕生からの歴史を携えているからだ。 それゆえ 「からだ」 は賢いが 「頭」 は新米だと言えるのである。 

 

 人類は、単細胞生物時代より何百万という生を、頭のない生を通過して、多くの知恵をからだに貯えてきている。 だから、いつであれ怖くなると、本能的に呼吸するのをやめるか、あるいはごく浅くしか呼吸しないようになった。 それはまさしく死に近づくのを怖がっているからなのだ。

 

 しかし本当のことを言うと、深い呼吸は生の中に死を吸収するものであり、生と死の間にひとつの橋渡しを構築してくれる。 そして、その死の恐怖は消え失せることになる。 もし奥深くお腹の底まで呼吸することができれば、恐怖など完全に消え失せてしまうに違いない。 それだからこそ日本の武士が世界の誰よりも簡単に自殺できるということなのだろう。                           つづく

 

 

今年も操体マンダラ、海の日に開催致します。

※「操体マンダラ」とは?

三浦寛が一日、操体の最新情報について語る、操体三昧の一日です。 弟子一同にとっては「師匠孝行する日」。

東京操体フォーラムや、通常の講習では語りきれないことを、

存分に出していただこうという算段です。 今年からはリクエストにお応えして、10時〜21時の開催になります。

昼食会 サイン色紙&ツーショット撮影会

足趾の操法®アドバイザー認定、操体プラクティショナー認定式、

今年より「足趾の操法指導者」認定を行います。

開催日時:2019年7月15日(月)海の日 10時〜21時 ルーテル市ヶ谷センター

★予約制で、当日の参加受付はありません。ご注意下さい

https://www.sotai-miura.com/?p=1314