おはようございます。
治すのは、あくまでからだである。
バランスを崩し、不快症状が生じている状態でも、からだは本来のバランスに戻ろうと働いている。
イタイ、ツライをはじめとする気持ち悪い感覚も、本人にバランスの崩れに気づいてほしくて、協力してほしくて発しているサインでもある。
そのサインに早めに気づき、不快なバランス状態から、からだの悦ぶ気持ちの良いバランス状態にしていける程、病からは無縁でいられる。
操体の創始者である橋本敬三先生は、晩年に「気持ちよさを(からだに)ききわければいいんだ、気持ちよさで治るんだからな」という言葉を遺している。
橋本先生の現役時代に行っていた、痛い方から痛くない方に動かして診る操体法も、ボディの歪みに着目して、神経系や循環系の圧迫を単に取り除くだけでなく、動かして診る事で系統的にも生命エネルギーの流れをスムースにし、効果を高めていた。
そして橋本先生は、そこに満足することなく、より全体的な調和に導けるよう、現役を退いても学びと研究を続けていた。
そして、学びと研究を続けた最晩年になって、上記のような「気持ちよさで治る」という言葉を発した。
しかし、橋本先生には「気持ちよさで治る」という操体法の体系化までの時間(寿命)が残されていなかった。
橋本先生の遺志を受け継いだのが、私たちの師である三浦寛先生であった。
三浦先生は、からだの動きを分類し、オクタント(極限安定率)を満たすからだの全体的な動きを研究し、そのからだの動きにより身体全体が調和に導かれる中で、気持ちよさがききわけられ、気持ちよさの質によって、バランス制御が可能となる事を究明した。
つまり、より質の高い気持ちよさをききわけ、その気持ちよさを十分に味わう事で、不快な症状、疾患からの改善が可能という事。
これは、全体的な調和がより密になるという事でもある。
橋本先生が現役時代に行っていた、痛い方から痛みのない楽な方に動かして診る操体法では、全体的な調和の粗いところがあった。
その調和の主体は横紋筋系骨格関節系であり、不随意筋まで含めた調和はなかなか成り立ち難かった。
例えば、内臓疾患を抱えた腰痛などの場合は、横紋筋系、不随意筋系どちらも良くなるようなバランスとは成り難かったと聞く。
しかし、気持ち良さの質の高さをバランス制御の基準とする事により、調和は成り立ち、どちらも改善がみられるようになった。
調和の和は広がり、質的にも粗い結びつきではなく密な結びつきになったという事。
「からだにききわけた気持ちよさで治る」これは、今の社会通念に照らし合わすと、解りづらいかもしれない。
しかし、生命の生存にとって「快に従う」という事は、切っても切れないものなのであり、そうなっているという事は救いなのである。
不快に従って生きろというのであれば、此の世は生き地獄であろう。
生命の仕組みが、有難くそうなっているという事からどう学ぶか。
大切な事だと思う。