東京操体フォーラム 実行委員ブログ

 操体のプロ、東京操体フォーラム実行委員によるリレーブログ

言葉を統制する(自分を大切にする)

操体のどこが面白いのかと言えば、息・食・動・想+環境を全部考えているところかもしれない。調息法や呼吸法の専門家がいる。食の専門家がいる。また、身体表現や身体の使い方の専門家がいる。心の問題を解決するプロがいる。それぞれのプロの深め方は素晴らしいと思うが、よく考えてみるとこの4つは密接に関連しているのである。それが面白いと言えば面白い。


呼吸をすれば胸郭が動くし、胸郭が動けば脊柱が動き、立位であれば呼気で体重がつま先側に移動し、吸気で踵に移動する。食が偏れば体調を崩すし、不快な気分で食事をとっても身にならない。息食動想それぞれの達人は、この4つの営みのバランスに気づいているのだと思うが、普通の人は結構別々に考えているのではないかと思う。例えば今年から40歳以上にはメタボ健診が義務づけられた。私の経験から言うと、確かに体重が適正になる。食事制限なしで半年間に10キロ体重が落ちたという方が周囲に8名ほどいる。これは皆男性であるが、やせようと思っていたわけではなく、単に操体がきもちいいので習慣にした、あるいは講習に参加して定期的に、積極的にきもちのよさを味わったという結果にすぎない。詳しく言うならば、「からだにききわけて」」きもちよさを味わって、からだに十分とおし、「息食動想」のバランスが整ったためである。


しかし、多くの方は「何回、どれくらいやれば効果があるのか」というところに目が行くようだ。つまり「動いてカロリーをいくら消費するか」しかし、感覚の分析を伴わないものは「操体」とは言い難いし、単に動いてカロリーを消費するのとは全く違うのである。なお、最近の研究によると、日本人の30代から40代の男性に肥満が増えているという。メタボリック、あるいはメタボリック症候群予備軍だ。何故増えているのかというと、労働時間が長くなっていることに一因があるらしい。長時間労働で疲れたビジネスパーソンは手軽な高カロリー商品をとることが多くなっているからだそうだ。これはストレスの解消をしているのではないかと思われる。


ここで、「言葉の統制」ということを考えてみたい。言葉の統制とは何か。これは「息食動想」の「想」(精神活動)と深く関わっている。よく思うのだが、操体実践者で「息食動想+環境」のバランスをうたっていて「想」を「明るく大らかに」と言っている人ほど実際はあまり大らかではないような気がする(笑)。私の思い違いかもしれないが、「明るく大らかに」皆なりたいのだが、それが出来ないから皆悩むのである。
それだったら、自らの口からでる言葉を統制しなさい、言葉を統制すれば、「想」もコントロールできるということなのだ。


言葉の統制と適正体重、何の関係があるのかと言うと、密接な関係がある。よく「水を飲んでも太る」という話を聞くことがあるが、そういう場合「私、水を飲んでも太るの」と、口癖にしている場合が多いのだ。言葉で自分に暗示をかけているのである。


ちなみに「お金がない」と言っていると、本当にご縁がなくなるらしい(笑)


もっと言えば、脳のシステムは言葉に対して「誰が主語か」は認識しないで処理するらしい。例えば他人に対して否定的な言葉(けなす言葉とか)をかけた場合、脳は主語抜きで理解し、その結果、自分に返ってくるというサイクルになるのだという。逆に相手をほめるということは自分に対していい言葉をかけているのと同じなのだそうだ。もっとすごいのは、自分が発した言葉は、一番自分に返ってくるという。まさに言葉を統制することは、自律可能、自己責任なのだ。
本当に言葉は運命のハンドルなのである。



畠山裕美