2000年代半ば頃より「統合医療」という言葉を耳にするようになりました。
書店で『武術と医術−人を活かすメソッド』(集英社新書)を手にした時、その表ら閃くものがありました。
武術研究者の甲野善紀先生と統合医療医の小池弘人先生の対談です。面白くないはずがありません。スリリングな言葉が連載されています。
その中から厳選し、私なりに嚙み締めてみたいと思います。
(41p)
小池: そうですよね。だから一番怖いのはペーパー上で仕事をやっている人たちです。
ロジックを考える人たちが、考えた事と現実におこていることとの違いを分かっていないような気がするんですよ。
医療もそういう側面があって、基礎研究をしていて、研究の中では分かっているけれども、実際の人間に適用するとき分からない事が沢山あります。
研究中心の先生たちと臨床の先生たちの発想の違いというのはそこにあります。
机上での論議を好む先生たちは白黒つけるような、 「どちらが正しいのか」 といった二分割の傾向は強く出るように思います。
一方で、医療の現場中心主義の医師はグレーソーンを受け入れる共通の認識を経験的に結構持っていると思います。
現場の医師は 「科学的じゃない」 とか 「だから開業医は」 とか言われながらも、 「実際の人間はそう理想どおりになってないからね」 という認識があるわけです
- 作者: 甲野善紀,小池弘人
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2013/06/14
- メディア: 新書
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「理論と実践はちがう」 とは昔からの言い古された言葉です。臨床では正しい事ではなく、ふさわしい事を為すべきなのだ、と私は思っています。
ガイドラインに沿ってマニュアル通りに加療、施設にする治療者も増えているそうですがやがて間に合わなくなるでしょう。
「臨床に正解はない。からだが答えである。」
生身のからだは、きわめて多様であまりに個性的です。
多くの問題を集約して何らかの法則性を導き出そうとするものを研究者と言い、その法則、理論の例外に日々遭遇し、世界の多様性に驚き、
人体の神秘に畏敬する者を臨床家と呼ぶのだと思います。どちらも必要です。