東京操体フォーラム 実行委員ブログ

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両兵衛

お、三日目のキーワードは『両兵衛(りょうべえ)』です。
両兵衛と聞いて直ぐ分かる方は、これ又マニア、私と言えばキーワードは
大河と気付いた方はピンと来たはずです。

この大河というキーワードは一年間、良くも悪くも話題にされる
(私だけか?)ので、年頭に当たり書いておこうかなと思った次第です・・
既に放送は始まっておりますので、お分かりだとは思いますが、
今年の大河は『軍師 官兵衛』とかなり渋めのチョイスとなりました。

私にとって黒田官兵衛は歴史にはまって行く切っ掛けとなった司馬遼太郎先生の
播磨灘物語の主人公だったこともあって、近年珍しく愉しみに観させて戴いております。

新装版 播磨灘物語(1) (講談社文庫)

新装版 播磨灘物語(1) (講談社文庫)

っても、主人公も地味なら、馴染みのある信長や秀吉メインの大河と違って、
姫路界隈の城の名前や豪族の名前が出て来ても、一般的には余り盛り
上がらないなぁ〜と感じております。
しかも残っている肖像画を見ても岡田君とは、ほど遠いキャラなので、
もっと根暗な感情変化を表情に現さないキャラの方が良いのになぁ〜
などと、ジャニ中心の配役に違和感覚えています。

私は司馬遼先生の本から歴史の扉を開かれました。司馬遼先生の本
を読んでいる方はおわかりだと思いますが、司馬遼先生の表現が旅紀行文
的要素が満載なので、本を読んだ後はその地に赴いて、空気感を味わい
たくなるのです。私が旅好き(史跡巡りが主ですが)になったのも、司馬遼
先生の影響大です。
当然、播磨灘物語を読んだ後は、カーナビが無かった当時、地図を片手
兵庫県界隈をウロウロしていたのを思い出しました。

兵庫近郊は戦国時代の遺構が数々残っており、マニアにとっては一つ一つの
山城や遺構を萌え萌えしながら、歩きたくなるのです。
車を走らせていると、○○城跡の看板が見えると直ぐ車を停めて、
歩き出すので、家内と外出する際の合い言葉が『今日は靴?履き物は?』
と足場の悪い山城巡りが殆どになるので、いまだに奥との合い言葉となっております。

当然のことながら、今回のキーワードとなっております『両兵衛』
に関しても、色々と訪ね歩きました。
因みにマニアじゃ無い方向けに『両兵衛』とは秀吉が織田麾下の武将
として各地を転戦していた頃に、秀吉を戦略面から軍師として支えて
いたのが、竹中半兵衛黒田官兵衛という、お互い名前に”兵衛”
を持つ二人の事です。

秀吉の出世街道、前期を支えたのが竹中重治(半兵衛)』と言われています。
中々この武将は謎の多い方で、私的には秀吉の業績を大きく見せるために、
やや後世、大袈裟に創作した様な感じも無きにしも非ずと思っています。
秀吉が三顧の礼で向かえたとか、暗愚な主君を諫めるために、稲葉山城
僅かの手勢で奪取したなど、諸葛孔明の如き天才軍師と、その軍師が秀吉に直接仕え
たいと信長に願い出たなどという逸話は、一次史料に見当たらないことから、
どう考えても創作っぽいですよねぇ〜

一方で黒田官兵衛(如水)』は信長の西侵の頃から秀吉に仕えた、
秀吉出世街道、中期から後期にかけての軍師と言えます。
本来、官兵衛のお仕事は毛利方に傾いている主家の方針を織田方に
持って行き、播磨諸大名を織田方に寝返らせ、毛利攻略をスムーズに進める
ことでした。

しかし、北風と太陽の様な織田と毛利の芸風の違いは、時勢が読めない
播磨近郊の旧態依然とした大名には理解出来ず、毛利は義に厚いから、
パッと出の田舎大名の信長に屈するなんて出来るか!という主に感情的
理由で、官兵衛の注進に耳を貸さず、結果的に主家は滅んでしまいます。
この間に官兵衛は信長から離反した摂津の荒木村重の説得に赴き逆に幽閉
されてしまい、足も自由に伸ばすことの出来ない劣悪な環境の中で数年を
過ごすことになってしまいます。

そもそも『軍師』ってどんな職業でしょうか?謎多きご職業ですが、
私的に言うと、官房長官』+『経営コンサルタントですかね。
主家をどの様な経営方針でどの方向に導くか、一つ間違うと主家は倒産。
まさに命がけのご職業と言えます。当然のことながら求められるスペックも高く、
『心理学』『方位学』『戦略・戦術』を要求され、『機(気)に発し感に敏なること』
が求められます。

これって、まさに生き馬の目を抜く今の時代にそのまま要求される能力
では無いでしょうか?ここ最近のビジネス系歴史本で人気なのがリーダー
論よりも参謀論なのも頷けます。

混迷の時代に必要なリーダーとは、一人で全てを決定する様な信長
タイプのリーダーでは無く、支えてあげなければならないと思わせる様な、
周囲が支えるタイプのリーダーである方が道を間違えにくいとも言われます。
様々な参謀やアドバイザーを周りにおいて、都市計画や新国家を創り出して
いった家康タイプのリーダーが求められているのかもしれません。

ここからは大きく話しがズレますが、私の個人的、黒田官兵衛推薦図書は、
私の敬愛する劇画家平田弘史先生の『黒田三十六計』(リイド社です。
多分、殆どの方が目にすることが無いだろうと思われるマニアック時代物雑誌
コミック乱ツインズ』誌にて好評連載中です。

黒田・三十六計 1 (SPコミックス)

黒田・三十六計 1 (SPコミックス)

この平田先生、池上遼一大友克洋寺田克也など当代一流の絵師が、
揃って「師」と仰ぐ大先生でもあります。
氏は絵の素晴らしさ以外にも、遅筆で大変有名で現在連載中の『黒田三十六計』
でも、連載にも関わらず、年間に三回書くか書か無いか位の遅筆の大先生でもあるのです。

それにも関わらず、先生を待っているのは、やはりそこにあるこだわりです。
先生の劇画は大変緻密に描き込まれていて、その一コマ一コマに命の息吹を感じるのです。
その迫力たるや、貸本時代から描き続けている熟練の凄味だと思います。

画が気に入らない、思った表現が出来ないと連載を途中で止めたり、
編集泣かせだそうですが、まさに古武士的佇まいも私的にはツボです。
遅筆の理由を氏はインタビューで、望んで始めた仕事では無いけども
「生活のためとはいえ、いやそれゆえにこそ、半端な作品を出すことは
自分が許せない性分」
と語っています。19歳の時に麻酔無しで盲腸の
手術をしたりとまぁ〜、色々な経験をなさっています。

コメントを聞いたり、平田先生の写真を見ると、どことなく三浦先生に
似ているところなど、何だかどの世界でも一流に成ると佇まいが似てくるのでしょうか・・

ま、ともかく今年の年末に大河良かったねぇ〜等と語って終われる1年にしたいものです。


↑甲冑を身に纏った平田先生です